2025/07/23
フリーランスを悪用した島村楽器のビジネスモデルが明らかに
6月30日、島村楽器(東京都江戸川区)が公正取引委員会に摘発され勧告を受けた。フ
リーランスの音楽講師に対して優越的地位を濫用し、顧客に対する訴求としての無償レッ
スンを開催する際にフリーランスの講師にも無償でレッスンに当たらせていた。そもそも
島村楽器はフリーランスの講師に取引条件の明示義務を怠っており、報酬の額、報酬の内
容、支払い時期などは書面でもメールでも知らされていなかった。それでも約100名のフ
リーランスが応じて労務に就いていたのだからいかにフリーランスの立場が弱いものかと
窺い知れよう。
公正取引委員会の公表により島村楽器のフリーランス法に違反する行為が明らかになっ
たのだが、明らかになったのは違法行為だけではない。島村楽器のビジネスモデルの一端
も明らかになった。楽器の無料レッスンを広く告知して、その応募者に対するレッスンは
フリーランスの音楽講師に無料で請け負わせる。この時点で島村楽器は告知費用以外のリ
スクはない。応募者へのサービスはフリーランスの音楽講師に全て負わせている。フリー
ランスの音楽講師も無料レッスンの応募者が正式にレッスンを申し込めば仕事と報酬を得
ることができるので一見合理的なように思えるが実は違う。島村楽器はフリーランスに無
料レッスンを提供させることでノーリスクの販売促進を行っている。そして、無償レッス
ンの受講者が正式レッスンを申し込むとフリーランスの講師に支払うレッスン単価との差
額を得る。このスキーム上、島村楽器はノーリスクだがフリーランスの講師は正式レッス
ンの申し込みがなかった場合は島村楽器へ労務を無償で提供しただけとなる。要するに発
注者である島村楽器は「仕事が欲しければ自分で努力して得ろ」という立ち位置にあり、
フリーランスの音楽講師を実務的にも精神的にも優越した関係を利用することで成立する
ビジネスモデルを構築していたことになる。また、島村楽器は労働に対する報酬の支払時
期が60日を超える条件に設定していた。このことも違法行為として勧告されている。
昨年11月から新フリーランス法が施行されている。コロナ化を経て在宅ワークなどが普
及し働き方の多様が進んだ。無論、フリーランスの事業者も増加している。企業と比較し
てフリーランスやフリーランスの事業者は弱い立場に立たされることが多いことから新フ
リーランス法が整備された。取引条件を明示する義務、60日以内の支払期日、買いたたき
・返品の禁止、報酬減額の禁止、購入・利用の強要の禁止、不当な労務の提供の強要の禁
止、変更や受領後のやり直しの禁止、虚偽の募集の禁止、育児や介護等への配慮義務など
が規定されている。違反して勧告を受け従わない場合は罰金が科される。企業にとって罰
金を支払うことよりも違法行為を公表されることによる悪評が広がることの方がダメージ
が大きい。社会的に認知されている企業ならば新聞やテレビ、ネットで報道されることも
考えられる。世の中、仕事を得るために無償で行う仕事がいかに多いか、取引を継続する
為に如何に理不尽な要求を受け入れてきたか、発注者は身に覚えがあろう。「ついでにこ
れやっといて」「やっぱりいらなくなった」などというセリフに怯える日々からフリーラ
ンスが解放されると良いのだが。(世良 直)
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