2025/04/23
本当に「命を守る砦」といえるのだろうか。東京都墨田区の賛育会病院が、親の育てられない新生児を24時間体制で引き取る「赤ちゃんポスト」の運用を始めた。2007年5月に始まった熊本市の慈恵病院に次ぐ全国2例目の取り組みだ。赤ちゃんの遺棄や虐待死を防ぐ上で、手を差し伸べる医療者による取り組みは尊重されるべきだが、育児放棄を助長しかねないとの懸念の声は根強く、課題は少なくない。
全国で初めて赤ちゃんポストを開設した慈恵病院では、これまでに179人が預けられた。賛育会病院は、人の出入りが多い首都圏のため、利用者が増える可能性が高い。
国の調査では、2003~2022年度に遺棄や虐待によって生後1か月未満で亡くなった赤ちゃんは228人にも上る。ほとんどが、父親である男性らに助けてもらえず、孤立したまま、自宅トイレなど医療機関以外での危険な出産に迫られ、その後の悲劇につながっているのが実情だ。
こうした自体を踏まえ、赤ちゃんポストや内密出産について、慈恵病院や賛育会病院は「命を守る砦」だと主張する。確かに、孤立して出産した母親を社会で支えることは重要だ。ただ、赤ちゃんポストの存在が本当にその役割を担う上で必要なのか、疑問を抱かざるをえない事案も過去には起きている。
■赤ちゃんポスト第1号は3歳児の衝撃
2007年5月に日本初の赤ちゃんポストが慈恵病院に開設された当日。実は、最初に預けられたのは、新生児ではなく、「3歳の男児」だったのだ。しかも、孤立して出産した母親ではなく、事故で死去した母親の代わりに男児を育てていた親戚の男が、自らの勝手な事情で慈恵病院に預けていた。当時、新生児ではない物心のついた男児が赤ちゃんポスト第1号として預けられたことで、社会に衝撃が走り、育児放棄を助長するなどと、赤ちゃんポストへの批判はさらに高まった。
さらに、この親戚の男は数年後、未成年後見人でありながら預けた男児の財産を横領したとして、埼玉県警に逮捕されたのだ。男はこの男児を連れて各地を転々とし、ギャンブルで男児の財産を消費。その途中で熊本市の赤ちゃんポストに男児を預けたというから、呆れるほかない。この赤ちゃんポスト第1号のケースが刑事事件にまで発展した事実は、それほど知られていないが、施設の存在が「育児放棄」を助長したことを明白にしたといえる。
この赤ちゃんポスト第1号のケースは極めて特殊だが、開設後すぐにこうした事案が起きた点は見過ごすことはできない。2007年5月からこの18年近く、他の病院などで赤ちゃんポストを始める施設は一切現れてこなかったのも、医療者らの中にある「育児放棄の助長」への懸念が大きく影響しているとみられている。
検討に検討を重ねて赤ちゃんポストを開設したという賛育会病院の取り組みを、正面から批判するつもりはない。ただ、大事なのは、孤立して出産した母親に対する行政の支援策の拡充や、虐待防止に向けた取り組みの推進のはずだ。もっと国や自治体が積極的に対策を講じていく必要がある。
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