2024/12/23
静岡県の強盗殺人害事件で死刑が確定していた袴田巌さんが静岡地裁で9月下旬に「再審無罪」となった。検察は控訴を断念した。当然
の判断だ。同地裁は捜査当局による「3つの捏造」を認定した。捜査と裁判に誤りがなぜ起きたか精緻な検証が必要であるし、「開かずの
扉」と評される再審制度の在り方も根本的に問い直すべきだ。
1980年代に死刑事件の4件が相次いで再審無罪となった。当時、刑事法の大家だった平野龍一・元東京大総長は論文に「わが国の刑
事裁判はかなり絶望的である」と記した。袴田さんは戦後5例目である。事件発生は1966年。それから58年もたって、やっと「無罪」が確定した。その間、袴田さんは長期の身柄拘束によって心を病んだ。究極の人権侵害といえ、深い謝罪と反省が求められよう。何しろ同地裁では捜査当局による「3つの捏造」が指摘された。1つは長時間にわたる自白の強要があり、検察官の自白調書も捏造とされた。連日、平均12時間を超える過酷な調べで、体調も崩した。取調室で小便もさせられた。拷問に等しいではないか。逮捕後の20日目に「自白」したが、静岡地裁は「(自白は)非人道的な取り調べで獲得されたもので、捏造と認められる」と厳しく指弾した。2つ目の捏造は、「血痕の付いた5点の衣類」である。そもそも事件から約1年2カ月後に衣類が見つかったこと自体に不自然さが伴う。血痕に「赤み」が残っていた点も鑑定で「1年以上では赤みは残らない」とされた。これも同地裁は「捜査機関によって血痕を付ける加工がされ、タンク内に隠匿されたものだ」と認定した。捜査機関がこんなことをするとは。何と恐ろしいことか。袴田さんを犯人にでっち上げたわけで、恥ずべき権力の乱用だといえる。3つ目はズボンの端切れである。衣類は袴田さんのものでもないし、犯行着衣でもなかった。それゆえ実家から発見されたズボンの端切れも捏造と認定された。袴田さんの裁判を見るだけでも、いまだ「絶望的な刑事裁判」が続いているのは明らかだ。つまり確定判決の中核的な根拠だった衣類の証拠が次々と排斥されてしまった以上、袴田さんを犯人とする証拠などもはや存在しない。つまり控訴しても「再審無罪」を覆すことが困難だと検察当局はようやく悟ったのだろう。
TIMES
社会•事件


