政治•経済 社会•事件 死刑執行 2年半もなし 形骸化指摘も
死刑執行 2年半もなし 形骸化指摘も
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2024/12/31

 死刑が執行されない状態が続いている。秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大元死刑囚(当時39歳)が執行された2022年7月26日を最後に、約2年半にわたり執行がないままだ。静岡県一家4人殺害事件で、死刑となった袴田巌さん(88)が再審無罪になったことなども背景にあるとみられるが、未執行期間が長期間に及んでいるため、死刑制度の形骸化を指摘したり制度廃止を求めたりする声も上がっている。

■最後の執行は秋葉原無差別殺傷・加藤智大元死刑囚

「死刑執行の命令は判決確定の日から6か月以内にしなければならない」

刑事訴訟法は死刑についてこう定めるが、実際の執行の時期や対象者は法務大臣の判断に委ねられており、未執行の確定死刑囚106人(2024年12月末時点)の中には、死刑確定から数年~半世紀以上が経過しているケースもある。

 法務省は元々、再審請求中の死刑囚については、長年にわたり執行を後回しにする運用を続けていたが、2017年7月、当時の金田法相が「再審請求を行っているから死刑執行しないとの考えは取っていない」として、2人の死刑囚の死刑を執行した。

法務省はその後も再審請求中の死刑囚への死刑執行を続け、2018年には、オウム真理教の教祖・麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚(当時63歳)ら15人の刑を執行するなど、厳格な姿勢を鮮明にしてきていた。オウム真理教事件で執行された13人のうち10人、最後の執行となったアキバの加藤元死刑囚も再審請求中だった。

葉梨元法相のハンコ問題と袴田さん再審無罪

 だが、高齢受刑者への死刑執行を避ける傾向は顕著となっている。ある法務省幹部は「人道上の観点から、高齢死刑囚には執行に踏み切りにくい」と明かすこうした傾向が続く中、「死刑離れ」に拍車をかけたのが、「ハンコ問題」と袴田さんの再審だ。

 ハンコ問題では、アキバの死刑執行後の2022年秋に法相に就いた当時の葉梨康弘氏が公の場で、法相の庶務について、「死刑のハンコを押し、昼のニュースのトップになるのは、そういう時だけという地味な役職だ」などと発言。死刑制度を軽視するような姿勢に世間の批判が噴出し、葉梨氏はすぐに更迭されたが、ある法務検察幹部は「あのハンコ発言のせいで、逆に死刑執行の判断により慎重にならざるをえなくなった」と振り返る。

 法務省はさらに「袴田さん再審」という「爆弾」を抱え続けていただけに、その後の法相4人も執行しないまま、現在に至っている。

■遺族は怒り、厳格な運用を

死刑は命を奪う究極の刑罰であり、再審請求中の事件も含め、執行に慎重になるのは当然だ。袴田さんの事件でも、再審開始が2023年3月に確定し、2024年9月に再審無罪判決が言い渡された。

だが、同じ理由で何度も再審請求を繰り返す「執行逃れ」の疑いが強い死刑囚も少なくなく、遺族感情からすれば、死刑制度があるのに執行されない状態が長期化している現状には怒りや違和感しかないだろう

死刑制度の形骸化を指摘する声も根強く、一部の国会議員は死刑廃止を求めている。ただ、内閣府が2020年に公表した世論調査で、死刑容認は80・8%を占め、死刑廃止支持の9・0%を大きく上回り、現在の鈴木馨祐法相も、廃止には否定的な考えを示している。犯人の極刑を願う犯罪被害者も少なくなく死刑制度がある限り、厳格な運用が求められる。

 

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