社会•事件 前宮古島市長の苦悩 銀行の横暴に屈しない ②
前宮古島市長の苦悩 銀行の横暴に屈しない ②
社会•事件

2024/11/12

いきなりの提訴 何が何だかわからない 

ところが、問題はここから始まるのだ。自己破産まではいわば本稿の前段にしか過ぎない。

 昨年、つまり2021年1月の宮古島市長選で、下地氏は新人候補に敗れる。その後、同年5月、下地氏にさらなる苦難が訪れる。この件については、本稿とは直接、関係がないので(※但し、本稿の核となる事案にはこの件は大なり小なり影響があることは認めざるを得ない)、ここに当時の資料を繙くにとどめることとする。

 2021年5月12日、陸上自衛隊駐屯地の用地売却を巡り、業者に便宜を図る見返りに現金600万円を受け取ったとして収賄の容疑で沖縄県警に逮捕された。

陸上自衛隊駐屯地配備計画を巡っては、下地が市長在職時の2016年に受け入れを表明。当初の候補地は、ゴルフ場「千代田カントリークラブ」の所有地を含む2カ所だったが、下地は別候補地について水質汚染への懸念を理由に認めない方針を示す一方、「千代田を中心に事業を進めてほしい」などと防衛省担当者らに複数回、要望。2018年5月24日、下地は東京都内で、千代田カントリークラブ役員の所有地を駐屯地用地として国に売却できたことへの謝礼と知りながら、同役員から現金600万円を受け取ったとされる。同年6月2日、下地は那覇地検から起訴された。

2022年2月22日、那覇地裁から懲役3年、執行猶予5年、追徴金600万円の判決を言い渡された。3月7日、判決を不服として控訴した。

 すなわち、この件は今のところ、控訴中と言うことだ。

 この苦難の中、まるで追い打ちをかけるようにな事態が下地氏を襲う。

 「(今年の)夏のことです。まるで唐突にですね、琉銀(りゅうぎん、琉球銀行のこと)がですね、私のですね、資産を凍結してしまったのですよ。その時わたしは、1円の金も銀行から下ろせんよううになってしまいました。私は昨年の市長選で落選してから無職ですからね、今までの蓄えで生活しているわけです。その生活の根本をいきなり琉銀が凍結してしまった。いきなり生活が断たれてしまったわけです。あまりのことに頭が混乱してしまいました」(下地氏)。

 一体何が起こったのか?下地氏はいくら頭を振ってもわからず、頭を抱えるしかなかったという。

 「琉銀に尋ねました、〝どういうわけなのか〟とね。そうしましたら、〝コーラル・ベジタブルのことです。ご存じのように自己破産しました。市長として、そして、社長として保証人となっていますから、陶然負債の保証をしてもらうまでです〟と言われました。驚きました。確かに、コーラル・ベジタブル社の社長は、宮古島市長という規定にはなっています。これは第三セクターという会社の性質上、当然のことです。しかし、実務には一切携わらない。しかも宮古島市の市長は今は私ではありません。社長とは言っても私の会社でもなんでもない。私が名ばかりの社長時代、この会社からは一銭も給料、報酬は出ていません。もちろん、それはそれでいいんですが、市長でも社長でもない今年に破産したからといって、負債だけはすべて私が背負うというのは一体どういうことなのか?いくら琉銀に訊いても、〝下地さんは(宮古島市の)市長で、(コーラル・ベジタブル社の)社長でしたよね?自己破産した以上負債を保証するのは当然じゃないでしょうか?〟とくる。資産全部を凍結された私は一時、食うや食わずに陥りましたよ」(同)。

 琉球銀行は、コーラル社のメーンバンクである。下地氏に背負わされた負債の保証額は、9000万円だという。ほぼ負債総額である。

 「以前、琉銀は、コーラル社を民間企業に売却する話を私にもってきて、ソッとこうささやいたことがあります。〝売却先が正式決定するまでの数ヶ月の間だけ、会社(※コーラル社)の保証人になってくれませんか?便宜上のことで、しかも数ヶ月間のことですから〟。そのときは、すっかり(琉球銀行を)信用していたものですからね、二つ返事でその申し出を受けたと記憶しています。会社も特に危険な状態だったとは記憶していません。まさか、その時のことがこんな形になって降りかかってくるなんて。まるで悪夢を見ているようです」。

年金も凍結 終わりなき闘い

 琉球銀行は年金も凍結してしまったそうで、いよいよ下地氏は生活ができなくなってしまった。琉球銀行に年金だけはなんとかしてくれ、と懇願した。渋々年金だけは解除したそうだが、それにしても下地氏はいまだに混乱状態に陥っている。無理もない。下地氏と同じ立場に立たされたら、誰もが同じ心境に陥るだろう。

 琉球銀行は昨年の下地氏の事件を鑑みて負債の保証をゴリ押ししてきたことは想像に難くない。いかにも金融機関のやりそうなリスクヘッジというやつだ。金融機関独特のあの傲慢という奴である。

 「こんなことがあってもいいものか」。資産凍結以降、下地氏はいつもこのフレーズが頭中を渦巻いている。

 この暗澹たる事案は、何一つ先が見えていない。

 

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