2025/02/08
平成以降で犯罪歴史上、最悪の犠牲者を数えた放火殺人事件が、異例の展開に突入した。36人が死亡した2019年の京都アニメーション放火殺人事件で、自ら控訴を取り下げて1審・京都地裁の死刑判決が確定した青葉真司死刑囚(46)の弁護人が、控訴取り下げを求める書面を大阪高裁に提出したのだ。青葉死刑囚は初公判で起訴事実を認め、遺族にも謝罪しているが、弁護人は、妄想性障害による「心神喪失」か「心神耗弱」にあたるとして、無罪や刑の減軽を主張。今後は死刑囚の控訴取り下げの有効性が争われることになる。
▼控訴取り下げの有効性 精神状態が焦点か
昨年1月の京都地裁判決は、青葉死刑囚が犯行当時に妄想障害の罹患があったことは認めたものの、ガソリンを用いた計画的な殺人事件は、死刑囚自身の性格や考え方に基づいていると認定。「妄想の影響はほとんど認められない」として検察の求刑通り死刑を言い渡した。
その後、判決を不服として、青葉死刑囚と弁護人が控訴していたが、今年1月27日に死刑囚本人が高裁に控訴を取り下げる書面を提出していた。
法務省関係者によると、死刑囚本人による控訴取り下げの場合、拘置所内にある「控訴取り下げ書」にある空欄を記載して埋め、署名・指印をして提出すれば手続きは完了となる。いったん受理されると、撤回はできない仕組みになっているため、青葉死刑囚の死刑が確定した。
「疑わしきは被告人の利益に」「疑わしきは罰せず」が本来の刑事司法の原則でありながらも、多くの犠牲者を出した凶悪殺人事件の被告の弁護人は、被害者遺族や世間からの批判が殺到するのは珍しくない。刑事弁護人として、担当した被告人の防御権を駆使し、被告人の人権を守るのは重大な責務だ。
ただ、今回の京都アニメーション放火殺人事件では、青葉死刑囚が初公判で起訴事実を認め、真意はともかく遺族への謝罪も行い、控訴を取り下げるという重要な「判断」を自ら下している。こうした経緯を踏まえると、弁護人がその判断を覆そうとするのは、被害者遺族らを冒涜するような行為ともいえるのではないか。
今後、現在の青葉死刑囚の精神状態などが争点になるとみられ、大阪高裁の判断に注目が集まる。ただでさえ日本では、死刑確定から執行までの期間が長期化しており、死刑本来の目的が果たされない現状に遺族らの不満は高まっている。不当な理由で死刑執行を先延ばしにすることは許されない。
TIMES
社会•事件


