2024/12/07
高齢者がマイホームなどの不動産を安く買い取られる「押し買い」被害が深刻化している。貴金属などとは違い、一定期間内ならば契約を取り消せるクーリングオフが自宅売却には適用されず、自宅を手放すか契約解除に伴う高額な違約金を支払い、高齢者は途方に暮れるしかないのだ。売却後に借りて住み続ける「リースバック」が悪用されるケースも判明しており、法改正による対策強化が必至だ。
◇リースバック悪用
国民生活センターによると、全国の消費生活センターには不動産の押し買い被害の相談が相次いでおり、60歳以上の男女に限れば、昨年度は800件近くにも上った。買い取り価格の算出根拠をきちんと示されないまま契約させられたり、認知症の高齢者が身に覚えのない契約をさせられたりするなどしたほか、解約に伴い約900万円の違約金を請求された事例もあった。
リースバックは、老後への備えとしてまとまった資金が得られ、固定資産税などを支払わずに住み慣れた家で暮らせるとして、近年は高齢者を中心に人気が高まっている。こうした現状に便乗する悪徳業者が、不動産売買に関する知識を十分に持たない高齢者宅に押しかけるケースは多発している。業者はあの手この手で高齢者を言いくるめた結果、不当に安く自宅を買い取り、高い賃料を請求しているのだ。
押し買い被害は、2013年2月施行の改正特定商取引法で、貴金属など物品を訪問購入される場合、契約から8日以内ならクーリングオフができるようになった。ところが、不動産は特定商取引法の対象外。さらに、宅建業者が売主の場合には、宅地建物取引業法のクーリングオフが適用されるが、自宅売却は本来の消費者である住民が「売り手」になるため、適用対象外のまま、悪徳業者が野放しになっているのが実情だ。
◇弁護団も
独り暮らしの高齢者も増える中、対策は急務となっている。第二東京弁護士会は昨年7月、消費者庁長官と国土交通相に対し、特定商取引法や宅建業法を改正し、不動産取引もクーリングオフ制度の対象に加えるべきとの意見書を提出した。今年4月には、消費者問題に詳しい在京の弁護士らが不動産押し買い被害の対策弁護団を設立し、悪質な業者を提訴するなど相談体制の充実が図られている。
ただ、そもそも不動産の市場価格は専門性が高く、自身が押し買い被害に遭っている認識できていない高齢者も相当数いるはずだ。国や自治体が高齢者に注意喚起するのはもちろん、「自宅を売ってしまってからではもう手遅れ」という今の状況は早期に改善されるべきだろう。自宅の押し買いもクーリングオフの対象にできるよう、早期の法改正が求められる。
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