連載•小説 椎野礼仁のTANKA de 爺さん 第24回 直立
椎野礼仁のTANKA de 爺さん 第24回 直立
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2025/09/16

弟を背にそわすことも諦めた 少年の目は何を見ている

「気を付け!」のように右手が伸ばされて隠し切れない気概が見える

唇をへの字に結び立って待つ 背なの重さは減じてゆかぬ

順番を待ちて弟を火に送る 終わりて帰るところは持たぬ

弟の右手が腕に重なるを その重なりが黒ずんでいるを

まっすぐな視線に何が映ずるか想像さえも俺にはできぬ

 

先週も触れたNHK文化センター南青山の福島泰樹実作短歌入門。先月の「七首連作」の課題は「ある写真を見て歌え」というものだった。1945年にアメリカ人のジョー・オダネルが撮った「焼き場にて、長崎、1945年」と題された写真だ。オダネルは撮影後、これを封印するが、アメリカでの反核運動の高まりの中、43年ぶりに 2007年、長崎市に寄贈され長崎原爆資料館に展示される。

だらりと垂れた背中の弟が死を象徴している。そして少年の眼差しと姿勢。難しい題材だったが、背景情報から歌を詠まないことを心がけた。あくまでも写真を詠む。それが写真に対する礼儀だと思った。

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