連載•小説 椎野礼仁のTANKA de 爺さん 第18回 『短歌の音』
椎野礼仁のTANKA de 爺さん 第18回 『短歌の音』
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2025/08/04

 孤島から海に投げ込む小瓶かも知れないけれどきみに言葉を

たっぷりと横顔おれに見せつけてキュウリを食らう 唇(くちびる)にマヨネーズ

「ごめんそろそろ鎮痛剤が効いてきた」電話の向こうの女友達

上の3首は、敬愛する女性歌人に献じた歌だ。

2首目、3首目は実際の景を、ほぼそのまま五七五七七にまとめた。

1首目は僕にしては珍しく、イメージを短歌に仕立てた。

孤島、小瓶、言葉と、キーワードが頭韻を踏んでいる(「こ」という音で)ので、気に入っている。から、込む、かも、きみ、などK音が連ねてあるのも、なかなかではないか(と自賛しておく)。

短歌は音の文学だから、同じ響きを大切にする。今読んでいる俵万智さんの『生きる言葉』というエッセー集にも、あの有名な

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

という歌について、「サラダというS音との響きを考えて、六月でなく七月を選んだのは正解だった」というくだりがあった。

自分の話で終わってしまったが、来週は、敬愛する女流歌人の、その敬愛する所以について触れてみる。(この項つづく)

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