連載•小説 椎野礼仁のTANKA de 爺さん 第16回 『父への挽歌 居留守』
椎野礼仁のTANKA de 爺さん 第16回 『父への挽歌 居留守』
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2025/07/21

歌詠みの父の最後の下の句は「心ならずも居留守を使う」

「病名は『擦声』と書いてあるんだよ」肺病みの父つぶやくように

日一日、力を失う身にありて一度たりとも病名を問わず

天井の節を見上げる一日をいつまで長いと思えていたか

ブーンと蚊 思わずパチン・・なす術もなく父は刺されていしか

庭先の白梅今年も花つくを父の座りし位置から見ている

いわゆる短歌っぽい題材をあまりよくすることはない私だが、鉄道兵としての父を2週にわたって書いたので、昔の作品だが父の死を詠んだ歌を記す気になった。これらの他に、瀕死の病床を歌ったものもあるので、次週に書くことにする。

ちなみに冒頭の歌で取り上げている父の最後(ではないが死の間際の歌であることは間違いない)の歌は、次のようなものだった。

玄関にてフォーンを二つ押してゆきぬ心ならずも居留守を使う

ベッドに付したきりで、来客にも出ていけない父は、この歌を残した。(この項、続く)

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