2025/10/01
『ソーゾク』に出てくる役者は大塚(寧々)だけでなく、みんな、いい。肩ひじひとつ張ることなく文字通り自然体で演じている。まるで甲子園に出て伽球を楽しむ高校球児みたいにキャメラの前での演技を楽しんでいるように見えた。役者をそうさせたのはやはり監督の力が大きいはずだ。
この映画の監督は藤村磨実也(ふじむら まみや)である。
エグゼブティブプロデューサーの関顕嗣はいう。
「藤村さんはもともとは脚本家なんです、それで子映画が監督デビュー作なんです。6年にもわたって構想を練って今回仕上げました。いい作品に仕上がりましたよ。監督デビューでこれだけの作品を送り込んできたというのはなかなかできたものじゃない」。
監督デビューでこのクオリティーというのは、これからに期待が寄せられる。藤村は昭和38年生まれだから目下62歳。言ってみれば遅咲きということになるのだろうが、これからについては確かに期待できるだろう。
藤村は試写会で大塚と共に舞台挨拶をした。その時こんなことを話していた。
「相続は決して一部の人達の特別な問題ではなく、本当に誰の身の上にも降りかかってくる〝大問題〟なんです。このことを肝に銘じながら映画をご覧になってください。
もう一つ私はこの映画を撮っていて痛感したのです。相続問題は女性の問題なのだ、ということです。昨今ジェンダーについてあれこれ言われますが、相続委問題は誰がなんといおうと主役は女性です。女と女の真剣勝負のステージなんです。ジェンダーなんか関係ない、相続問題において男の入り込む余地はございません。ああ、情けない(笑)。けれどこれは例外などありません。主役は女性。男はわき役、端役なんです。この女性間の葛藤を描いてみました」。
映画を観ると藤村のこのコメントには大きく頷ける。そして男性であったならだれもがこう考えるのだ。
『相続問題が勃発したとき、オレもこうなっちまうのかなあ、トホホ…』。
藤村は登場する各女性をきめ細やかにそれぞれの個性をとらえてうまく描いているのだ。相続問題の主役は女性、男性は立つ瀬なし。これ、極めてシリアスな現実と受け止めるべき。まかり間違ってもこの女性が主役の問題に口をはさむべからず。この映画の沈黙の〝教訓〟である。(敬称略 つづく)
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