連載•小説 椎野礼仁のTANKA de 爺さん  第23回 大江 
椎野礼仁のTANKA de 爺さん  第23回 大江 
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2025/09/08

「大江はなぁ」呼び捨てにして語るのが誇らしかった大学一年

性的人間と言葉を発した級友に「俺も読んだ」と視線で共感

「連帯」に希望を託した若書きの作家に問いたい二十一世紀

密に鷹、星に桃と呼んでもみよ 『万延元年のフットボール』

少年の漂流と自立その挫折 貪り読んだ『芽むしり仔撃ち』

少年の成長譚の苦さとは 『芽むしり仔撃ち』これぞ文学

弟よ少女よセクスよ李よ谷よ 芽をむしられて撃たれし哀れ

                                                                                 

NHK文化センター南青山で、わが師福島泰樹が実作短歌入門という講座を持っている。この講座の特色は毎回(二週間に一回程度)「七首連作」が課せられることだ。

行き当たりばったりに歌を詠んでいた私には、七首もの連作はしんどいものだった。師はそれを見極めて、それまでの中野教室を取っていた私にこちらへの転籍を奨めた。

乗ってよかった。一つのテーマで七つの別の歌を作ることは、対象への考察を深めることでもあり、違った視点からの見方が要請され、表現の多様性が求められた。本当に勉強になっている。

上掲七首はその最新作で、「好きな本を詠む」が課題だった。東京の田舎高校からいきなり文学部の学生になった私にとって、周囲の一浪や二浪のおっさんたちの語る文学論が、そもそも言語からしてわからず、まばゆく見えた。

そこで知った大江は、僕の永遠の作家となった。

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