連載•小説 そろったのは138年ぶり!歌麿の大傑作『雪月花』3部作
そろったのは138年ぶり!歌麿の大傑作『雪月花』3部作
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2025/10/06

 もう少し栃木県絡みの話を。当時は下野でも狂歌が盛んに詠まれていた。蔦重が版元で編者を
南畝としてリリースした『新玉狂歌集』などの狂歌集には、下野の狂歌師の作品が数多く掲載さ
れている。下野の商人たちと歌麿との間には、アーティストとスポンサーのような関係が生まれ
たようだ。
近年、栃木県内の旧家などで歌麿の肉筆画が発見された。『女達磨図』『鍾馗図』『三福神の
相撲図』がそれ。さらに喜兵衛の叔父である善野伊兵衛という商人が歌麿にオファーし、完成さ
せた大作が『雪月花』3部作だ。『品川の月』(1788年完成)『吉原の花』(1791~92年完成)『

深川の雪』(1802~1806年完成)の3点からなり、それぞれ縦150cm~2m弱、横約2.5m~3.4mと
いう大判の作品である。
『品川』は品川の妓楼の座敷、『吉原』は吉原の大通りと引手茶屋、『深川』は深川の大料亭
の座敷に遊女や飯盛りなどの女性がそれぞれ19人、52人、26人も描かれた豪華な群像画だ。歌麿
の肉筆画の最高傑作とも呼ばれる。
この3部作は1879(明治12)年に栃木県内で善野家が公開してから海外に流出、『深川』だけが
国内に持ち帰られ、戦後に1度公開された後は長らく行方不明となっていた。2012(平成24)年
、『深川』は再び発見され、2017(平成29)年には米国に保存されている他の2点とともに138年
ぶりに3点そろって公開された。(つづく)

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