蔦重、神道・仏教・儒教を合わせた「心学」ブームに乗る
連載•小説
2025/09/04
寛政の改革は、また「心学」というジャンルのブームも巻き起こした。心学というのは、日常
生活の中で自分の倫理強化を目指す社会運動のようなもの。松平定信も聴講し高く評価してい
ると噂された中沢道二という心学者がその中核だった。その教えは石門心学とも呼ばれ、神道
・儒教・仏教を融合し、庶民から武士、大名まで幅広い層に影響を及ぼしたという。
蔦重も中沢の『道話聞書』をリリース。これは後で『道二翁道話』と改題して再販されている
。さらに中国の儒教の教えに基づき、特に優れた孝行を示した24人の親孝行の物語を絵本形式
でまとめた『絵本二十四孝』も手掛けたとされる。
もっとも同じ時期、1790(寛政2)年に出した『即席耳学問』という黄表紙の中で「例の教訓異
見のうつとうしいも随分承知之助と~」と相変わらず「うざってえな」とばかりに幕府の方針
をクサしているのは蔦重らしいが。
当時の黄表紙全般には、やたら「教訓読本」と銘打ったものが多かったとか。よく似たタイト
ルが氾濫する近年のビジネス書・自己啓発本と同様、ブームにはしっかり便乗する出版人の伝
統だろう。
さて、黄表紙・洒落本・狂歌本で出版史にその存在を決定づけた蔦屋重三郎だが、そのもう一
方――浮世絵というジャンルにおいては、この厳しい処罰を受けた後に本格的に動き始める。(
つづく)
主な出典:鈴木俊幸『蔦屋重三郎』平凡社
別冊太陽『蔦屋重三郎の仕事』平凡社
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