天保版『笑点』?蔦重が生んだ狂歌絵本という新形態
連載•小説
2025/06/05
蔦重が世に送り大ヒットした『吾妻曲狂歌文庫』は、絵と狂歌を並べる狂歌絵本という新しいタイプの狂歌本の走りとなった。大田南畝、唐衣橘洲、朱楽菅江の3巨頭の名は江戸の大人から子供にまで知られ、狂歌連に集まる狂歌師たちからは「狂歌四天王」などと呼ばれるスターたちも生まれたという。
「才人が即興で作った面白い作品を、芸名とポートレートともども媒体に乗せる」という意味では、現在の日本テレビ系『笑点』と通じなくもない。媒体の進歩とアイデアのなせる技、というわけだ。
以降、蔦重が出す狂歌本や戯作に掲載する挿絵の描き手として若い絵師たちが蔦重に見いだされ、腕を磨く。その代表が喜多川歌麿、葛飾北斎という後の浮世絵のスーパースターである。
蔦重には当時から「侠気がある」という世評があった。少し後だが1856(安政3年)の『戯作者小伝』には、蔦重について「文才ある者の若気に放蕩なるをも荷担して、又客として財を散ずるを厭はざれば、是がために身を立て名をなせし人々あり」と記している。
要は、若くて才能のある面々に自らカネを出して(吉原で)大いに遊ばせ、その成長を見守る。若い面々はそれを意気に感じて蔦重の下で大いにその能力を発揮する、というわけである。(つづく)
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