2024/12/15
トルコを旅行中のある日、こんなことがあった。
「おい、坂本、アンカラって思ったより遠いな」
「そうですね、4時間近く乗ってるっすよ」
「長すぎるよな」
「そもそもイスタンブールからアンカラに行くのになんで国際線なんでしょうね」
「・・・・あれ、坂本、これアンマンって書いてあるぞ」
「アンマンってどこですか」
「しもた、アンカラとアンマンと間違ってチケットを買ったんじゃ」
アンカラに行ってブルガリアやモロッコのビザを取得するだけなのに間違ってヨルダンの
アンマンに行ってしまったこともあった。ワイルドだろぉ、で済ますには大き過ぎるミス
だった。そのミスよりも、若狭さんはアンマンのイミグレーションでエロ本を没収された
ことの方が悔しかったようだ。安宿のベッドの中で若狭さんのすすり泣く声が聞こえたよ
うな、そんな気がした。
若狭さんは倉敷の仕出し屋の息子で聞くところによると相当のボンボンである。妹も神戸
に住んでいるがやくざと結婚してしまって両親を怒らせてしまったようで、お金持ちの両
親の寵愛を彼が一身に受けることになったということらしい。若狭さんはバイトは一切し
ていない。大学の授業も受けない。とにかく、寝ているか、酒を飲んでいるか、麻雀をし
ているか、という生活だった。いつ若狭さんの部屋に行ってもいるので俺たちの溜まり場
になっていた。ときどき居留守も使うのだが、「一生、結婚できないお前に女を紹介して
やるからこのドアを開けろ」と藤田さんや椎野さんや高野さんが呼びかけると簡単に屈し
てドアが開く。若狭さんは好待遇の大学生活を4年で終わらすにはもったいないと言って
単位をわざと取らずに温存していた。大学から首を言い渡されるまでは留年するといきが
っていた。
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