連載•小説 福島県双葉・大熊両町と青森県六ケ所村にソッポを向く国民の身勝手
福島県双葉・大熊両町と青森県六ケ所村にソッポを向く国民の身勝手
連載•小説

2025/05/27

のど元過ぎれば…国民意識なんて勝手なものだな 今でも原発被害に悩まされている地域のことなど何処かな

(写真 伊沢史朗双葉町長 双葉町HPより)

 原発への意識が変わってきている。2021年には「即廃炉・積極的廃炉」の廃止派が6割を超えたが、25年は35%とほぼ半減し、活用派は58%に達した。活用派の半数以上が「運転延長」を望み「増設」も全体の1割を超えている。原発は「トイレのない高級マンション」と言われるが、変わらないのはそのトイレ問題だ。国民は「除染土壌搬入場所」と「使用済み核燃料最終処分場」を福島県と青森県に押し付けたまま知らん顔を通している。まず「除染土壌搬入」問題を取り上げる。14年前の東京電力福島第1原発の水蒸気爆発は巨大な後遺症を残した。放射線が降り注いだ土地の除染土壌の搬入は、22年3月で終了したもののその最終処分の見通しが立っていない。

 福島県双葉・大熊両町に中間貯蔵施設を建設することが決まった15年、政府は30年後の45年までに除染土を福島県外に運び出すことを約束した。中間貯蔵・環境安全事業株式会社法には「中間貯蔵開始後30年以内に福島県外で最終処分を完了する」と明記されている。中間貯蔵施設に積み上がった土壌は東京ドーム11杯分の1400万立方メートルに達している。こうしたことから22年に環境省が東京都新宿区、埼玉県所沢市、茨城県つくば市の3カ所で再利用を検討していると発表して、新宿と所沢で説明会を開催したところ、周辺住民や地元町会が猛反発した。その後、除染土の受け入れを表明した自治体はなく宙に浮いた状態だ。いわゆる「迷惑施設」の誘致には困難が伴うことが珍しくない。が、双葉町の伊沢史朗町長には、「福島で作られた電力を消費してきた首都圏で、この問題に関心を持ってもらいたい」との考えがある。新宿区、所沢市、つくば市は「住民の見識でノー」を錦の御旗にして、その考えにそっぽを向いた。

 次に青森県だ。原発から出される使用済み核燃料など高レベル放射性廃棄物の最終処分場は、まだ日本には存在しない。全国の原発から出た高レベル放射性廃棄物は、一時貯蔵施設のある青森県六ケ所村に運び込まれて今年で30年が経過した。この最終処分場の選定も難航している。宮下宗一郎青森県知事が時事通信のインタビューで、「国が主体性を持って事業者と連携して解決していく課題」と政府の決断を迫っている。17年には全国の地層の特徴を示した「科学的特性マップ」が公表された。つまり「廃棄物埋設に安全な場所の地図」だ。20年に北海道の寿都町(すっつちょう)と神恵内村(かもえないむら)、24年に佐賀県玄海町で第1段階の文献調査が始まり、北海道の2町村は適性が認められた。第2段階の概要調査、第3段階の精密調査に関してもスムーズな展開を願ったが、ここでストップしたままだ。原発反対派の中には、核軍縮運動の流れを引き合いに出して「処分地を提供することは核拡散を認めることになる」と意味不明な理由を挙げて妨害するバカ者もいる。しかし今後、AI(人工知能)などがより普及し、電力を原発1基分丸飲みする国内外のデータセンターが各所にできれば、電力需要の著しい増加が予想される。高レベル放射性廃棄物の出ない核融合炉などへの転換も含め、政府や事業者は原子力研究開発の意義と未来を提示し、粘り強く国民を説得しなければならない。

 

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