連載•小説 短期集中連載 現役国会議員秘書 世良 直のヒストリカルスクープ!黒人侍「弥助」は実在したのか その1  ゲーム「アサシンクリードシャドウズ」による杜撰な歴史考証
短期集中連載 現役国会議員秘書 世良 直のヒストリカルスクープ!黒人侍「弥助」は実在したのか その1  ゲーム「アサシンクリードシャドウズ」による杜撰な歴史考証
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2025/04/02

アサシンクリードシャドウズというゲームソフトがことの発端

 初めにお伝えしておくが私は歴史家でも歴史愛好家でもない。ゲームもパックマンやドンキーコング以来ほとんど嗜んだことがない。少年時代も青年時代もボードゲームやカードで遊ぶ程度で日常は野球やボクシングに打ち込んでいた。私には流行りのテレビゲームが入り込む余地はなかった。どうやら最近ではコンピューターゲームなどの腕を競うeスポーツが生まれ国際大会も開かれるようになっているという。IOCはeスポーツに触手を伸ばし将来のオリンピック正式競技入りを検討するに至っている。コンピューター機材の前に座ってスポーツ競技を仮想空間で競うなんて私にはSF的に思えて時代の変遷を感じてしまう。そうした中で今年11月に発売予定のフランスのUBIsoft社が手掛けるアサシンクリードシャドウズというゲームソフトに端を発して日本のみならず海外を巻き込んだ熾烈な論争が起きている。ピクシブ百科事典によると問題の概要は以下のようにある。
 
 『アサシンクリード』とは、UBISoft(以下「UBI」)によるアサシン(暗殺者)を主役とした潜入アクションゲームシリーズである。シリーズを重ねるごとに様々な時代や地域が題材に選ばれ、2024年11月15日発売予定の『アサシンクリードシャドウズ』では初めて日本が舞台になることが発表された。

 しかし、主人公のひとりが日本人ではなく黒人の「弥助」であったこと、またゲームPVに明らかに不自然な日本要素が散見されたことで不満を抱いた多くのユーザーによって炎上騒ぎとなる。……だがこれはほんの切掛けにすぎなかった。ゲームの詳細や様々な事情が明らかになるにつれ、炎上要素が山と積みあがっていき、もはやアサシンクリードシャドウズというゲームや開発元のUBIを飛び越え、世界的なポリコレバイアスや特定人物による歴史の捏造まで議題に上がるとんでもない騒ぎが持ち上がったのである。

 今回、ゲームソフト内における外国人にありがちな間違いや誤解を論うことはしない。それは他者にお任せする。本来、民間事業者が開発販売するゲームソフトの内容についてその是非を問う必要などないし、表現の自由は憲法で保障された権利である。日本でもフランスでもその権利は保障されている。併せて検閲も禁止されていることからよほどのことがない限り表現の自由が制限されることは無い。ゲームはゲームとして自由に表現しコンテンツを構成すればよい。アサシンクリードシリーズについてUBIは"Inspired byhistorical events and characters. This work of fiction was designed, developed andproduced by a multicultural team of various religious faiths andbeliefs"としてあくまで歴史フィクション作品という扱いである。一方、アサシンクリードシャドウズのゲームディレクターを務めるCharles Benoit 氏はXboxのインタビュー記事で“We’re showing realhistorical figures, such as Oda Nobunaga and a lot of events that happened during thattime,”と答えている。これを多くの批判的な立場にある人物が「実在した歴史上の人物や当時の出来事を忠実に描いている」と訳すことで「歴史に忠実に描いていない」ということを非難することに繋がっているのだろう。だが、インタビューの原文には「忠実に描いている」というフレーズは見当たらない。よって、UBIはフィクションをフィクションとして描くことを明らかにしており、そこに齟齬は見当たらない。ではなぜアサシンクリードシャドウズに多くの批判が集まるのか。それはいい加減な歴史考証や既存著作物の無断盗用が発覚したことによる。「関ヶ原鉄砲隊」(任意団体)の画像や「相馬野馬追」の画像など無数の画像盗用が確認されている。桜の時期にコメの豊作を喜ぶという季節感の錯誤。スタッフインタビューでの「日本では斬首は珍しい光景ではなかった」という誤認。

 日本語吹替版のトレイラーに中国語の字幕を表示するミス。二条城障壁画を無断で模写し改変して使用。営利目的使用を禁じている東大寺大仏殿の八角燈籠を無断使用。神社で線香を焚いている。上座と下座の概念がない。弥助の幟に豊臣の家紋を使用。甲冑に記された織田家の家紋が上下逆。関ヶ原鉄砲隊の画像のアートブックでの使用許可を得たという発表が虚偽であったことが判明。次から次へアサシンクリードシャドウズに関する不始末が発覚し炎上が拡大していった。そして、最も問題とされるのが主人公の一人である黒人の「弥助」についてである。UBI公式は弥助を「圧制者から日本を救う伝説の侍」と誇張表現している。フィクションだから受け流すが、圧制者とは誰を指しているのか。理解しがたい弥助の紹介が「弥助の正体」へと多くの人が関心を移すこととなる。(つづく)

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