連載•小説 椎野礼仁のTANKA de 爺さん」第10回 寺山修司 その1
椎野礼仁のTANKA de 爺さん」第10回 寺山修司 その1
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2025/06/09

母を殺し弟と鳥追いやって 俺も行きたや寺山ワールド

 下手くそな、寺山修司の本歌取りを試みたつもり。

 本歌は以下の二つだ。

亡き母の真っ赤な櫛で梳きやれば山鳩の羽毛抜けやまぬなり

新しき仏壇買いに行きしまま行方不明の弟と鳥

 こう読むと、寺山は母を亡くしていて、弟は行方不明になったかのようだ。全く違う。父こそ幼少期に亡くした寺山だが、母は長生きし、47歳で死んだ寺山の葬儀委員長を務めた。そして寺山は一人っ子である。

 キーワードは自己劇化。それまでの一人称短歌(詠んでいる内容は自分のことで、本当に起こったことを歌う)を寺山は平気で打ち破った。現代短歌の革命児と言われる所以である。

 そして若者たちに「書を捨てよ、町に出よう」とアジりまくった。私の友人は寺山に煽られるまま、三重から東京に出て、寺山が通った早稲田大学教育学部に入った。その後、風俗ライターとして斯界をさまようこと数十年。芝居の世界にも足を突っ込み、近年は故郷にアングラ系の劇団を引っ張って自主公演を打っている。(この項続く)

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