杉田玄白『解体新書』を出した名門版元・須原屋市兵衛
連載•小説
2025/04/14
もう一人、大河『べらぼう』がその時代を語ってゆく上で欠かせぬ存在となっていく版元が、里見浩太朗演じる須原屋市兵衛であろう。
当時、江戸でナンバーワンの書物問屋が須原屋茂兵衛。後に大躍進した蔦重とともに、川柳で「吉原は重三、茂兵衛は丸の内」と並び称された大書店である。ちなみに丸の内とは、丸の内の大名・旗本を相手に販売する、大名や幕府官僚の氏名・石高・俸給・家紋などを記した年鑑形式の『武鑑』――いわば武士の紳士録――を経営基盤としていたことによる。
この須原屋からのれん分けしたいくつかの分家のうちの1つで、申椒堂(しんしょうどう)という屋号で日本橋室町に店を構えていたのが市兵衛だった。早くから海外の情報に目を向けており、1763(宝暦13)年には”日本のダ・ビンチ”平賀源内に『物類品隲』を書かせたのを始め、源内の周辺の蘭学者たちの著書を多く出版している。
最も知られているのが杉田玄白・前野良沢が上梓した『解体新書』、そして林子平『三国通覧図説』であろう。前者は言うまでもなくオランダ語の医学書『ターヘル・アナトミア』の訳書である。幕府の規制におびえながらも1774(安永3)年に出版にこぎつけた、日本初の本格的な西洋医学書の翻訳本だった。日本の近代科学は本書で始まったとも言われている。(つづく)
主な参考書籍:鈴木俊幸『絵草子屋 江戸の浮世絵ショップ』平凡社
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