連載•小説 好評連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』⑦ 『小躍りをしていた怪しい男』
好評連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』⑦ 『小躍りをしていた怪しい男』
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2025/04/22

『小躍りをしていた怪しい男』

 自宅から駅までの道のりが遠回りだったのを知ったのは去年のことである。
 俺はある日、駅とは反対側の方へあてもなく歩いていた。単なる散歩であるが、駅の反対側に用事があるということがこの先の人生で限りなくゼロに近いゆえ、あてもなく歩く以外は一生その道を通らないだろう。本当にあてもなかったので、一生入ることのない路地を歩いていた。その時である。駅のない方から電車の音が聞こえて来た。不思議な感覚であった。俺は音のする方へ、その日初めて、あてがあって向かって行った。山田、鈴木、田中などの表札を抜けると、目の前に線路があった。四次元への入口のようであった。

 そこから俺は、散歩とは思えぬほどのスピードで線路付近を進んで行った。そして、気付けばワープしたように駅に着いていた。風景はいつもと同じだったが、俺は電車に乗らないのに改札口まで歩いてしまった。

 あの日、切符売り場の前で、小躍りをしていた怪しい男は俺である。

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