さながらアイドルのサイン入り集合写真?吉原遊女の豪華本
連載•小説
2025/06/09
蔦重が狂歌絵本をさらに発展させた豪華版が、1784(天明4)年の『吉原傾城新美人合自筆鏡』だった。駆け出しの頃に買い取り形式で出したとされる『青楼美人合姿鏡』の続編で、大型2枚続きの錦絵を7組まとめた画帖仕立て(折本形式)で、序文は太田南畝が、跋文を朱楽菅江が担当している。
見開きの1カットに、上は花魁から下は禿に至るまで北尾政演の描く5~8人の遊女の華やかな全身像が。その余白に彼女たちの名前と自らよんだ和歌や俳諧が、本人たちのものに似た筆跡で書き込んである。いわばアイドルのサイン入り集合写真といった趣だ。
狂歌絵本と並行して蔦重が手掛けた黄表紙も、乗りに乗っていた。1785(天明5)年はまさに黄表紙の黄金期の頂点とされるが、ヒット作はほぼ蔦重・耕書堂が手掛けたものだった。
その代表作である『江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)』は、裕福な家庭に生まれたブ男の道楽息子・艶二郎が、吉原で色男として何とか名を上げようとあれこれ画策するものの、ことごとくうまくいかず……というストーリー。当時、遊女たちが容貌の割に粋がろうとする客を陰で「艶二郎」と呼んでいたという程の大ヒットとなり、黄表紙の代表作として今も評価が高い。(つづく)
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