好評連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』vol.22『歯の移植(上)』
連載•小説
2025/06/18
昔は、食堂にある爪楊枝を見る度に、一体いつ使うのだろうと思っていた。歯に物が詰まる経験を殆どしたことがなかったからである。
所が今、47歳になって爪楊枝はなくてはならない存在になっている。というのも、数年前に俺は虫歯で歯を抜くことになったのだが、その際に、インプラントまたは入れ歯という選択肢を迫られ、前者は金銭面で厳しく、後者は年齢面で恥ずかしく、はてどうしようかと悩んでいた所、歯科医の口から「では、歯を移植しますか?」という奇妙な提案を受けたのである。
「奥歯に親知らずがあるので、それを移植します」
聞けば、まず俺の虫歯を抜く、続けて親知らずを抜き、それを空いた穴にはめる。要は手術である。治療費は安く、自分の歯を移植するため噛み合わせもさほど悪くないという。
俺は即座に「やります!」と返答した。歯の移植をした人というのを聞いたことがなかったので、なんだか選ばれし者のような気持ちになったからである。
(下につづく)
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