政治•経済 イスラム諸国がパレスチナ支援に消極的な理由
イスラム諸国がパレスチナ支援に消極的な理由
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2025/10/07

パレスチナ問題は長らく中東の核心的な対立の一つとされてきた。国際社会においてもイスラエルとパレスチナの衝突は繰り返し非難され、イスラム諸国が「同胞」を積極的に支援すべきだという期待が向けられてきた。しかし、現実には中東やイスラム諸国の多くが、表向きの支持表明や人道的援助には動いても、軍事的あるいは決定的な政治的支援に踏み込むことは少ない。この背景には、イスラム世界が直面する現実的な利害が横たわっている。

その一つが、イスラエルの経済的・技術的な存在感である。近年イスラエルは「中東のシリコンバレー」と呼ばれるほど、人工知能、サイバーセキュリティ、農業技術、軍事産業など幅広い分野で世界をリードしている。とりわけイスラエルが生み出した水資源管理や灌漑技術は、中東諸国にとって喫緊の課題解決に直結するものであり、その技術力は極めて魅力的だ。

サウジアラビアをはじめとする湾岸諸国は、国家の将来像として経済の多角化を進めている。石油依存からの脱却を掲げる「サウジ・ビジョン2030」に象徴されるように、ハイテク産業やデジタル経済への投資が急務である。こうした国々にとって、イスラエルの先端技術は、自国経済を変革するために欠かせないパートナーシップを提供してくれる存在だ。

そのため、イスラエルとの関係を必要以上に悪化させることは、経済戦略上の大きなリスクとなる。イスラム諸国がパレスチナを声高に支援しない理由の一端は、まさにこの「実利的な計算」にある。外交的な声明ではパレスチナへの連帯を示しつつも、裏ではイスラエルとの接触を保ち、将来の経済関係を損なわないようにする姿勢が見て取れる。

さらに、地域の安全保障環境も影響している。イランの台頭を警戒するサウジやUAEにとって、イスラエルは軍事的に頼り得る相手でもある。アブラハム合意に象徴されるように、イスラエルと湾岸諸国の国交正常化の動きは、安全保障と経済の双方における利害の一致を反映している。この流れに逆行してまで、パレスチナ支援に積極的に傾くインセンティブは乏しい。

もちろん、イスラム諸国の世論は依然としてパレスチナ寄りであり、政府も表面的には支持を表明せざるを得ない。だが、国家の長期的利益を優先する指導層の本音は、イスラエルとの関係を「適度に」維持することにある。こうして、イスラム諸国は道義的な連帯と実利的な計算の狭間で、パレスチナ支援において決定的な一歩を踏み出さない現実が続いている

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