政治•経済 中国が日本産牛肉の輸入再開へ:トランプ関税下での日米関係に楔を打ち込む狙い
中国が日本産牛肉の輸入再開へ:トランプ関税下での日米関係に楔を打ち込む狙い
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2025/07/15

中国政府が日本産牛肉の輸入を24年ぶりに再開する方針を固め、近く日中間の協定が発効する
見通しとなった。この決定は、2001年のBSE(牛海綿状脳症)問題を理由に中国が日本産牛肉の
輸入を禁止して以来、初めての動きとなる。表面上は両国間の経済協力の進展と見えるが、その
背後には、トランプ大統領の強硬な関税政策と日米貿易交渉の行き詰まりを背景に、中国が戦略
的に日米関係に楔を打ち込む狙いがある。
 2025年1月に発足したトランプ米政権は、「アメリカ・ファースト」を掲げ、貿易赤字削減を目
指して高関税政策を次々に打ち出している。日本に対しては、7月7日にトランプ大統領が石破茂
首相宛てに書簡を送り、8月1日から日本からの輸入品に25%の関税を課すと通告した。これは、4
月に公表された24%から上乗せされた税率であり、自動車(25%)や鉄鋼・アルミニウム
(50%)への品目別関税とは別枠で課されるものだ。
 日米貿易交渉は、トランプ政権の強硬姿勢により難航している。トランプ氏は「アメリカは世
界中の国から金を奪い取られ利用されてきた」と主張し、日本に対して貿易障壁の撤廃を強く要
求。日本の自動車産業や部品メーカーは、既に4月から課されている10%の一律関税に加え、新た
な関税の影響に直面しており、コスト増が懸念されている。 日本の経済界では、関税交渉が長期
化し、日本企業がさらなる打撃を受ける可能性が懸念されている。
 このような中、中国がこのタイミングで日本産牛肉の輸入再開を決めた背景には、単なる経済
的思惑だけでなく、地政学的な意図がある。中国は、トランプ政権による高関税政策に直面して
おり、4月には中国からの輸入品に最大145%(現行では30%に引き下げ)の関税が課されるなど
、米中間の貿易戦争が激化している。 中国も報復として米国製品に125%の関税を課す方針を表
明したが、5月にそれぞれ115%税率を引き下げることで合意し、今日に至っている。
 この米中貿易摩擦のさなか、中国が日本との関係強化に動くのは、戦略的な意図が透けて見え
る。中国は、米国との対立が深まる中、日本を自陣営に引き込むことで、日米同盟に揺さぶりを
かけ、トランプ政権への圧力を間接的に強めようとしている。Xの投稿でも、「中国のしたたかさ
」「日米関係を悪化させる策略」といった声が上がっており、タイミングの意図を疑問視する意
見が目立つ。
 日本産牛肉の輸入再開は、中国にとって経済的メリットも大きい。中国国内では高級食材への
需要が高まっており、日本の高品質な和牛は富裕層を中心に人気がある。日本の牛肉輸出額は
2024年に前年比10%あまり増の648億円を記録し、米国向け輸出が中心だったが、トランプ関税
による米国市場の不確実性が高まる中、中国市場は新たな輸出先として魅力的な選択肢となる。
中国側は、日本との協定を通じて経済的な結びつきを強化し、日本企業に米国市場以外の選択肢
を提供することで、日米関係の間に楔を打ち込みたい狙いがある。
 中国の動きは、日本にとって経済的な機会であると同時に、外交上の難しい判断を迫るものだ
。米国との同盟関係を維持しつつ、中国との経済協力を進めることは、綱渡りのような外交手腕
が求められる。仮に、中国との経済関係を再び強化していったとしても、台湾や尖閣の問題で中
国との政治的緊張が高まれば、そういった経済・貿易分野はすぐに経済的威圧の対象となる。日
本としては、中国が常に何を考えて日本に接近しているか、戦略的に考える必要がある。

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