政治•経済 トランプ対中貿易戦争の目的はフェンタニルなどの合成麻薬排除にある
トランプ対中貿易戦争の目的はフェンタニルなどの合成麻薬排除にある
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2025/05/25

トランプ大統領はなにがなんでも〝フェンタニル〟を撲滅させたいようだ 

(写真 米国麻薬取締局(DEA)紋章 Wikipediaより)

 米国の薬物・麻薬の過剰摂取による死者数は、ガザ紛争の犠牲者の数や、ロシアとの戦争によるウクライナ側の犠牲者の数を上回っていると推察される。欧州はウクライナ戦争の停戦のために米国に積極的な関与を期待しているが、トランプ米大統領は「ウクライナ戦争は欧州の問題だ」と強調している。これはウクライナ問題に無関心だからではない。トランプ氏にとって米国内の薬物・麻薬戦争という「内戦」での勝利が何よりも第一だからだ。

 米国疾病対策センター(CDC)によると、薬物の過剰摂取による死亡者数は昨年約27%減少し、10万人を下回って8万391人となり、2019年以来の最低水準を記録した。しかし、死亡者の半数以上は依然としてオピオイド(麻薬性鎮痛剤)に属する致死性の高い合成麻薬フェンタニルによるものだ。麻薬取締局は、23年の薬物過剰摂取による死亡者数約10万7000人のうち70%がフェンタニルなどの合成麻薬の乱用によるものであると発表したことがある。それほどフェンタニルは米国を蝕んでいるのだ。

 トランプ米大統領は就任直後、「中国がメキシコ経由で米国に麻薬を大量に密輸しており、時にはコカインや他の物質が混ぜられている」と非難し、これが中国に120%の懲罰的関税を課した理由ともなっている。トランプ氏は就任3週目に、米国の最重要輸出国の3カ国メキシコ、カナダ、そして中国に関税を課した。メキシコとカナダに対しては、関税停止の見返りに、米国への麻薬密輸を阻止するために国境に1万人の兵士を派遣するなどの対策を約束させた。トルドー首相(当時)はまた、カナダがメキシコの麻薬カルテルをテロリスト・リストに載せ、米国と協力して「組織犯罪、フェンタニルの密売、マネーロンダリングと戦うための特別部隊を設置する」と発表した。

米国麻薬取締局(DEA)によると、中国は「米国に密輸されるフェンタニル関連化学物質(麻薬用前駆物質)の主な供給源」という。これらは通常、小包配送で米国に送られる。また財務省の報告書によるとフェンタニルの違法生産と流通により、密売人は24年に14億ドルの利益を得たと推定され、そのほとんどが米国の銀行を通じて流出したという。報告書は、フェンタニルの取引に関与している主なカルテルを、シナロア・カルテルとカルテル・ハリスコ・ヌエバ・ジェネラシオンと特定しているが、この2つの麻薬カルテルはメキシコでのフェンタニルのサプライチェーン(供給網)をほぼ支配しており、中国から調達した麻薬用前駆物質と製造装置を使用し、秘密実験室で製造されていると述べている。フェンタニルの取引には、フロント企業を使った化学製品ブローカー、マネーミュール(カネの運び屋)、米国を拠点とし、中国のサプライヤーからフェンタニルの麻薬用前駆物質を購入する仲介者が関与している。

 ところで、関税率をめぐる米中の貿易交渉が5月10日から2日間スイスで開催された。米国からはベッセント財務長官とグレアUSTR代表。中国からは何立峰副首相が出席し、結果的にアメリカは関税率115%の「値引き」に応じた。そして日本のマスコミは報じていないが、フェンタニル問題も取り上げられ、中国の王小洪・公安相も会議に派遣されたとウォールストリートジャーナルは伝えている。

 

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