政治•経済 「聖書と経営」を実践した 「ライオン」 創業者 小林富次郎の実像 「聖書を抱えた経営者」の広告戦略と社会貢献活動 第2回 早川 和廣●ジャーナリスト
「聖書と経営」を実践した 「ライオン」 創業者 小林富次郎の実像 「聖書を抱えた経営者」の広告戦略と社会貢献活動 第2回 早川 和廣●ジャーナリスト
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2025/01/17

(写真はライオンHPより引用 「ライオン最古のカタログ」)

「聖書」を抱いた企業人

 新一万円札の肖像画は、日本の資本主義の父と言われる「渋沢栄一翁」になった。電子マネー化が進行する中での新札の発行、特に渋沢翁の登場は、マネー資本主義の限界が明確になっている現在、最後の一万円札になるとの予測もある。

 渋沢翁の今日における価値は、「論語と算盤」という道徳と経済を両輪とする成功モデルを、明治期から推進・展開して、1000社以上の株式会社、社団・財団などの事業団体を誕生させていることだ。その渋沢栄一の「論語」の代わりに「聖書」をビジネス展開の指針としたのが、ライオン創業者の小林富次郎である。クリスチャンの彼は「算盤の聖者」とか「聖書を抱いた経営者」と言われた。

 小林富次郎は幕末の風雲急を告げる1852年(嘉永5年)2月に生まれ、1910年(明治43年)12月に58歳で亡くなっている。死の1年後の1911年(明治44年)11月、創業者の遺徳を讃えるとともに、その精神を将来に伝えていくため、『小林富次郎伝』(初版)が当時のライオン歯磨株式会社から出版されている。さらに、創業者の生誕100年祭を執り行った1951年(昭和26年)には、その数々の業績を忍ぶとともに「ライオン」の将来の発展に資するものとして、また知己友人の座右に供えてもらおうと『小林富次郎伝』第三版(非売品)が出版された。筆者の手元にあるのは、同年4月に出版された第三版である。加藤直士著『小林富次郎伝』(初版)に、新たに中尾清太郎氏編集による「聖書日々実行訓」(後に改題して「先代の言葉」)を付録に加えて、出版されたものだ。当時の創業者が、いかに世間の注目を集めていたかは、カトリック青年会館で行われた盛大な葬儀の様子とともに、多くの人が見送る葬列を収めた映画フィルムが2011年、国の重要文化財になっていることでもわかる。とはいえ、歯磨き・洗剤・目薬等の企業「ライオン」を知らない日本人は、まずいないはずだが、創業者について知る人は少ない。ほとんど、忘れられた存在である。(つづく)

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