社会•事件
終わりに代えて限りない悲しみ 本件『社外取締役島耕作』の辺野古抗議行動デマ中傷報道に接して、ヤマトの一員として感ずることは怒りではない、限りない悲しみで ある。10月22日朝日新聞夕刊「素粒子」は書く。【「辺野古抗議行動に日当」のデマを垂れ流した「島耕作」。社長・会長に出世したエリートも晩節汚し。この程度の情報判断力で今の社外取締役は務まるの?】 全く同感である。「取材」ならば、どうして他方、即ち抗議行動側の意見も聞かなかったのか。取材で複数人から「辺野古では日当が支払われているようだ」と聞いたと作者らは言う。いずれも直接の体験でなく「伝聞」である。ところが件の漫画では登場する女性に「抗議する側もアルバイトでやっている人がたくさんいますよ 私も一日いくらの日当で雇われたことがありました」と伝聞でなく、直接の体験として語らせている。ここに抗議行動に対する作者の嫌悪・悪意を感ずる。冒頭記した「モーニング、及び作者の「お詫び」が読者に対する ものであって抗議行動参加者に対するものでないことはどうしたことか。
沖縄県民の求めるささやかな幸福追求の権利 辺野古での抗議行動は憲法13条、幸福追求の権利に基づくものだ。沖縄県民が求める幸福とは何か。それは耳をつんざくような爆音のない静かな夜、空から危険物の落下のない安全な生活、米軍・軍属による性被害のない安心できる社会等々といったささやかなものに過ぎない。国土の0・6%の狭い土地に在日米軍施設の70%が集中し、県民は米軍基地の重圧に呻吟している沖縄では、このささやかな権 利が保障されていない。憲法番外地である。 そもそも権利の保障はそれが保障されない時代があったことの反映である。例えば表現の自由の保障は、表現の自由が保障されない時代 があったからだ。憲法は種々の権利を保障しているが、その根幹をなすのは13条「幸福追求の権利」だ。この国ではかつて、個人は天皇の為、国家の為にあるとして、個々人の幸福を求めてはいけないという時代があった。そんな昔の話ではない。たかだか80年前の話だ。その反省から生まれたのが憲法13条、幸福追求の権利だ。ヤマト(本土)は沖縄に米軍基地を押し付け、平穏な生活をしたいという沖縄県民のささやかな願いを踏みにじっている。ヤマトの13条のために沖縄県民の13条が犠牲にされていることに筆者を含むヤマトの人々がどれだけ自覚的だろうか。
死刑が執行されない状態が続いている。秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大元死刑囚(当時39歳)が執行された2022年7月26日を最後に、約2年半にわたり執行がないままだ。静岡県一家4人殺害事件で、死刑となった袴田巌さん(88)が再審無罪になったことなども背景にあるとみられるが、未執行期間が長期間に及んでいるため、死刑制度の形骸化を指摘したり制度廃止を求めたりする声も上がっている。 ■最後の執行は秋葉原無差別殺傷・加藤智大元死刑囚 「死刑執行の命令は判決確定の日から6か月以内にしなければならない」 刑事訴訟法は死刑についてこう定めるが、実際の執行の時期や対象者は法務大臣の判断に委ねられており、未執行の確定死刑囚106人(2024年12月末時点)の中には、死刑確定から数年~半世紀以上が経過しているケースもある。 法務省は元々、再審請求中の死刑囚については、長年にわたり執行を後回しにする運用を続けていたが、2017年7月、当時の金田法相が「再審請求を行っているから死刑執行しないとの考えは取っていない」として、2人の死刑囚の死刑を執行した。 法務省はその後も再審請求中の死刑囚への死刑執行を続け、2018年には、オウム真理教の教祖・麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚(当時63歳)ら15人の刑を執行するなど、厳格な姿勢を鮮明にしてきていた。オウム真理教事件で執行された13人のうち10人、最後の執行となったアキバの加藤元死刑囚も再審請求中だった。 ■葉梨元法相のハンコ問題と袴田さん再審無罪 だが、高齢受刑者への死刑執行を避ける傾向は顕著となっている。ある法務省幹部は「人道上の観点から、高齢死刑囚には執行に踏み切りにくい」と明かす。こうした傾向が続く中、「死刑離れ」に拍車をかけたのが、「ハンコ問題」と袴田さんの再審だ。 ハンコ問題では、アキバの死刑執行後の2022年秋に法相に就いた当時の葉梨康弘氏が公の場で、法相の庶務について、「死刑のハンコを押し、昼のニュースのトップになるのは、そういう時だけという地味な役職だ」などと発言。死刑制度を軽視するような姿勢に世間の批判が噴出し、葉梨氏はすぐに更迭されたが、ある法務検察幹部は「あのハンコ発言のせいで、逆に死刑執行の判断により慎重にならざるをえなくなった」と振り返る。 法務省はさらに「袴田さん再審」という「爆弾」を抱え続けていただけに、その後の法相4人も執行しないまま、現在に至っている。 ■遺族は怒り、厳格な運用を 死刑は命を奪う究極の刑罰であり、再審請求中の事件も含め、執行に慎重になるのは当然だ。袴田さんの事件でも、再審開始が2023年3月に確定し、2024年9月に再審無罪判決が言い渡された。 だが、同じ理由で何度も再審請求を繰り返す「執行逃れ」の疑いが強い死刑囚も少なくなく、遺族感情からすれば、死刑制度があるのに執行されない状態が長期化している現状には、怒りや違和感しかないだろう。 死刑制度の形骸化を指摘する声も根強く、一部の国会議員は死刑廃止を求めている。ただ、内閣府が2020年に公表した世論調査で、死刑容認は80・8%を占め、死刑廃止支持の9・0%を大きく上回り、現在の鈴木馨祐法相も、廃止には否定的な考えを示している。犯人の極刑を願う犯罪被害者も少なくなく、死刑制度がある限り、厳格な運用が求められる。
むなしさを抱きしめ、だが絶望することもなく サンゴと多様な生物が生息する大浦湾への土砂の投入は止まらない。キャンプシュワブのゲートからは毎日500台近くのダンプが土砂 を搬入する。沖縄戦の艦砲射撃で裸にされ、再生した山が再び裸にされる。むなしい。しかし、このむなしさを抱きしめながら絶望するこ ともなく辺野古での抗議行動は今日も続く。これこそが先人たちが連綿として続けて来た沖縄の運動だからだ。 辺野古での抗議行動は憲法13条(幸福追求の権利)に基づく非暴力の闘いである。現場のリーダーが抗議行動の新たな参加者に「非暴 力とは言葉の暴力も否定するものなのです」と説明する。現場では、排除する機動隊員に対する抗議もなされるが、その場合にも「税金泥棒!」、「ポリ公帰れ!」といった類の「暴言」が吐かれることはない。抗議行動参加者に「土人」と暴言を吐いた大阪府警など、県外の機動隊は別として、排除される沖縄県民、排除する沖縄県警の相互間にある種のリスペクトが存在する。こういうことは上っ面の調査や「取材」ではわからない。現場でずっと座り込みをしていることによって次第に見えて来る。辺野古では抗議行動一辺倒ではない。ダンプの隊列の合間を縫って昼食や交流会がもたれ、各地の報告などのほかに歌や、踊りもある。 歌には「沖縄を返せ」といった運動歌ももちろんあるが、「海の青さに空の青 南の風に緑葉の 芭蕉は情けに手を招く 常夏の国 我 した島沖縄」と謳う「芭蕉布」のような民謡も歌われる。歌や踊りはゲート前で機動隊と対峙しているときにも行われる。機動隊の隊長も歌や踊りの最中には規制・排除を控え、頃合いを見て、機動隊員に規制開始を命じる。抗議行動の現場リーダーと機動隊隊長の阿吽の呼吸だ。「ごぼう抜き」に際して、時には双方が激するところもないわけではないが、機動隊員たちの行動は概ね穏やかだ。抗議行動参加者を機動隊員3人がかりで運び出し、尻からでなく、まず足から着地させ、起き上がるのにも手を貸す。筆者は毎回「お世話様」と声掛けしている。人はこれを「馴れ合い」と呼ぶかもしれない。だがこれが「勝つことの秘訣は諦めないこと」という沖縄の運動なのだ。朝、抗議行動の始まる前、ゲート前で抗議行動参加者が沖縄県警員と「おはよう」と挨拶を交わしながらグータッチをすることもある。 年配の女性から「あなたたち、こんなことをしていていいの」と語りかけられ涙ぐむ、孫のような若い機動隊員を見たこともある。「あ なたウチナー口(沖縄の言葉)分かる」と声をかけて機動隊員にウチナー口で語り掛ける年配の女性もいる。こういう芸当は年配の女性で なければできない。昼食は各々がそれぞれ用意して来るが、中に、週1回だが、多くの人々のために盛りだくさんの食事を持参してきてくれる人がいる。聞けば、その日は午前3時頃から起きて準備するそうだ。筆者も随分ごちそうになっている。これを辺野古ヴァィキングと呼ぶ人もいる。手間暇はもちろんのこと、毎週のことだから経済的な負担も大変なものだ。
法の番人であるはずの裁判官が、インサイダー取引をしたとして罪に問われる異例の事態となった。証券取引等監視委員会は2024年12月23日、金融庁に出向していた裁判官・佐藤壮一郎容疑者(32)を金融庁品取引法違反の疑いで東京地検特捜部に刑事告発した。佐藤容疑者は同年4月に最高裁判所から金融庁企画市場局企業開示課に出向後、職務を通じて知ったTOB(株式公開買い付け)に関する未公開情報をもとに違法な株取引を始めていたという。 ■出向後すぐに不正な株取引 刑事告発を受けた東京地検特捜部が同25日に佐藤容疑者を在宅起訴しており、裁判官が今後は「刑事被告人」として公開の法廷で裁かれることになった。2025年早々にも東京地方裁判所で初公判が開かれる見通しだ。 証券取引等監視委や関係者によると、佐藤被告は4月の出向直後からインサイダー取引を開始。監視委の強制調査を受けた9月までに、自身名義で10銘柄について合わせて計951万円分を買い付けたとされる。 佐藤被告は、金融庁企業開示課で課長補佐を務め、関東財務局が審査を担当するTOBについて、実施予定日や価格などを知りうる立場にあった。このため、一部の金融庁職員にしか閲覧できないTOB案件を一覧にまとめた資料をみられる権限もあり、出向直後から不正な株取引を始めていたとされる。不正に買い付けた株の売買で、約400万円の利益を得ていた疑いがある。 ■検察などは「裁判官」の立場を重視 今回のように数百万円程度しか利益のないインサイダー取引の場合、証券取引等監視委員会は課徴金の行政処分に済ますのが通例で、刑事告発・起訴にまでいたるのは異例だ。監視委や検察が佐藤被告の「裁判官」という立場を重視した上で刑事罰に問うべきと判断した。 佐藤被告は一連の不正を認めているとされ、公判でも起訴事実を認めるとみられ、量刑が争点になる見通しだ。 知人らによると、佐藤被告は慶応大学法学部から同大法科大学院を経て、24歳で司法試験に合格したエリート。裁判官の妻とも結婚し、経済的に困っていた様子はうかがえず、生活も順風満帆にみえた。これまでの監視委や特捜部の任意聴取には、「ばれないと思った」などと供述しているが、動機についてはまだ詳述していないといい、公判でどこまで犯行の動機や経緯が明らかになるのか。裁判官が被告人となる異例の刑事裁判は今後、世間の注目を集めそうだ。
辺野古行きのバス代一律カンパ 辺野古での抗議行動は海上でのカヌー隊は別として、陸上はキャンプシュワブゲート前、安和琉球セメント桟橋前、塩川港の3箇所で月 曜日から金曜日まで毎日行われる。沖縄の現地の人々は、地域あるいは団体ごとに曜日を決めてこの3箇所での抗議行動を分担する。週1回、2回、多い人は週3回の参加となる。辺野古までは、各グループがバスを仕立てる。 筆者は朝7時、沖縄県庁前を出発するバスに乗り込む。辺野古までは1時間余、安和、塩川までは2時間近くかかる。地元の人々はそれ ぞれの停留所から乗車してくる。乗車する人には、バス運行代の一部に充当するため、一律金1000円程度のカンパが要請される。筆者は3日間なので、合計で金3000円、年間18日で金1万8000円(もちろんそのほかに航空機、宿泊代)の負担という計算になる。 地元の人々は、週1回の人は毎月4回、年間48回で金4万8000円、週2回の人は年間96回、金9万6000円、週3回の人は年間 144回で、金14万4000円の負担という計算になる。この計算は辺野古行きのバス代カンパに関してのみのものであり、抗議行動参加者にはその他にも多くの経済的負担がかかっていることは言うまでもない。それでも人々は辺野古の抗議行動に参加する。
「抗議行動に日当」がデマなことは決着済み 10年間にわたり、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設工事に対する座り込みの抗議活動を続けてきた沖縄平和運動センターの顧問、 山城博治氏は「使い古されたデマだ。影響力のある有名な作家がそんなにも軽い意識なのかと衝撃を受けている。怒りを通り越して悲しいと無念さを隠さない。長く反対運動が続くことに「県民の心に深く根差した運動だからだ。手当を10年も出していたら巨額の資金がいる。県民感情を理解し、状況をもっと調べて発信してほしい」と訴える(10月22日東京新聞)。 「抗議行動に日当」がデマなことはすでに東京MⅩテレビ番組【ニュース女子】裁判等ですでに決着済みである。にもかかわらず、辺野古 での抗議行動を中傷する悪質なデマは後を絶たない。筆者は数年前から2ヵ月に1度くらいの割合で辺野古での抗議行動に参加している。火曜日の最終便で那覇に行き、翌水曜日から金曜日まで辺野古での抗議行動に参加し、金曜日夜帰京するというスケジュールだ。 那覇空港からホテルに向かうタクシーの運転手から「観光ですか」と声を掛けられ、辺野古の抗議行動に参加と答えたところ、「あそこ ではお金がもらえるでしょう」と言われたことがあった。もちろん即座に否定したが、こういうデマを流す輩がいるようだ。(つづく)
2024.12.29
2024年10月21日講談社発行の成年漫画週刊誌『モーニング』の編集部と作家弘兼憲史の連名で「モーニング46号 (2024年10月17日発売)『社外取締役 島耕作』に関するお詫びとお知らせ」と題して以下のようなお詫び記事が発表された。 はじめに 【「モーニング」46号掲載の『社外取締役島耕作』(作:弘兼憲史)におきまして、米軍新基地建設に関連し「抗議する側もアルバイトでやっている人がたくさんいますよ 。私も一日いくらの日当で雇われたことがありました」という登場人物のセリフがありました。本作執筆にあたり作者・担当編集者が沖縄へ赴き、ストーリー制作上必要な観光業を中心とした取材活動をいたしました。その過程で、「新基地建設反対派のアルバイトがある」という話を複数の県民の方から聞き作品に反映させました。しかし、あくまでこれは当事者からは確認の取れていない伝間でした。にもかかわらず断定的な描写で描いたこと、登場キャラクターのセリフとして言わせたこと、編集部としてそれをそのまま掲載したことは、フィクション作品とはいえ軽率な判断だったと言わざるを得ません。読者の皆さまにお詫びするとともに、編集部と作者の協議の上、単行本掲載時には内容の修正をいたします。モーニング編集部、弘兼憲史】 件の漫画「社外取締役 島耕作」は1983年から連載が始まった「島耕作」シリーズの人気作品だ。大手電機メーカーに勤務する島耕作が課長から社長、会長と出世する物語で、タイトルも肩書に合わせて変化し、現在の島耕作は社外取締役という設定となっている。 (次回に続く)
2024.12.28
逆境に商機を見出す試みも つい先日、エンゲル係数が急上昇、家計支出の28%を占め、1982年以来の高水準になっているというニュースが驚きをもって迎えられた。8月だけでなんと30・1%。22年の数字を見ても、日本は年平均で26%超え。エンゲル係数の高さは貧困度合いを示すので、20%を超えることのないアメリカ、ドイツと比較すれば、日本が先進国の中でもかなりの貧困国家であることが分かる。 体力に余力のある企業はこれを商機とばかりに、サイゼリヤに倣えというわけではないが、逆張りの値下げに踏み込もうとしている。イオンは10月末まで約100品目を価格据え置きで増量するほか、11月からは一部商品の値下げまで行うとしている。吉田昭夫社長はこれを、「円安、インフレ下で原価が上昇する中での価格競争という環境」とした。企業としては、一部では利益を失うかもしれないが、さりとて商品訴求力を落とすことなく価格設定を行うという、かなりギリギリの選択を迫られているのではないだろうか。 同じ小売りでは、セブン&アイ・ホールディングスでは、「うれしい値!」と銘打った低価格商品の拡充を行い、もちろん外食でも、ファミレスや牛丼各社が9月以降には低価格キャンペーンを展開している。一方で、日高屋を展開するハイデイ日高では、5月から約80商品の10~60円の値上げを行ったものの(中華そば390円は死守)、全体のコスパの良さから、ファンの支持を失うどころか、24年3~8月期の単独決算で累計売上高プラス13%と、過去最高を記録。サイゼリヤでもそうだが、ちょい呑みでつまみを数品頼んでも1000円行くか行かないかのお得感がやはり人気。つい最近にはワタミがサンドウィッチの日本サブウェイを買収したとのニュースがもたらされたが、居酒屋が漂流する中、代わりにサイゼリヤや日高屋が、かつての居酒屋需要を取り込んで庶民的な支持を集める辺りに、現下の強さの理由があるのだろう。
2024.12.27
サイゼリヤにみる価格戦略 そんな一方、同じ外食にあっても好調なのがサイゼリヤだ。同社が9日に公表した24年8月期決算では、売上高が22・5%増、純利益は58%増の81億円で、過去最高の数字を叩き出しているので、まさに絶好調とでもいう勢いだ。 サイゼリヤと言えば、周辺環境がどうなろうと「値上げをしない」ことでデフレ経済の象徴的存在としてよく話題となってきた。22年には、その手頃感がデートで用いるにはどうかと、「サイゼリヤのデート論争」なるものまで起こったほどだ。だがそれぐらい、頑なに値上げを拒んできた同社の姿勢はファンの心をつかみ続けてきた。ただ何もしないままでは到底通用しないので、値段は据え置きながらサイズダウンを行ったり、7月10日には優待を廃止したことで、株価が急落するなどということもあった(もっとも廃止と同時に増配が行われているのだが)。 「同社はコスト高に対し、メニューや内容量の見直しで対応。その上手さについては、顧客離れにつながるどころか逆に、『それでも安い』といったお得感で、『量が減った分はほかの注文をしても……』と顧客に思わせ、結果、複数のメニューを頼む顧客を囲い込むという効果によってむしろ、客単価を毎年引き上げることに成功しています」と、同社推しの証券マンも感心する。 だがそれだけでは、過去最高益とはなかなかならない。そこには別の大きな理由がある。実際、国内に限れば営業利益は約15億円の赤字なのだが、これをカバーして余りあるのが、中国、台湾・シンガポールのアジア事業だ。特に約500店舗を展開する中国を中心に、会社全体の約8割にも当たる約116億円の営業利益をこの地域で稼ぎ出しているのだ(前期比約37%プラス)。中国と言えば世界的なインフレとは別に、コロナ禍からの立ち上がりが悪かったところに、不動産バブルの崩壊もあって個人消費が大幅ダウン。「貧乏人セット」なる、3元(約60円)の朝食に人気が出るほど、デフレ経済真っ只中だ。つまり同社は、インフレにも価格据え置きで対応し、デフレならば独断場とばかりに強みを発揮しているというわけだ。 そしてこの追い風の下、さらなる勝負を仕掛けようとしている。「中国では1000店舗の出店を目標に、広州の工場建設は既に着工されています。また国内でも、岐阜県で新工場を稼働させるべく、10月17日には地元の地権者などと覚書を交わしました。同社は23年5月に青森・五所川原市に初出店したかと思えば、既に5店舗を展開するなど、地方の出店攻勢に出ています。岐阜の工場建設では、まだまだ手薄な東海・北陸の出店を増やし、10年後には現在の1000店舗から1500店舗にするとしています」。 インフレの厳しい経済環境の下、捨てる神あれば拾う神もあるといったところか。(以下、続く)
2024.12.26






