連載•小説
大屋根リングは想像以上に巨大だった。 俺と母はすぐに登ってしまうのが勿体なかったので、複雑に組まれた柱の下を歩いていた。「まるで清水の舞台やなぁ」 そう、母の言う通り大屋根リングは清水寺と同じ貫工法という技術で作られているらしい。 「世界最大の木造建築でギネス認定されたんやで!」 「へぇ~やるやん!じゃあ登ろか~」 下からの景色にもう飽きた母は、専用のエスカレーターへ向かって行った。 「ワオ!絶景やな~」 まだエスカレーターの途中だが、もう母は絶景のフライングである。 そして気付けば清水の、いや、大屋根の舞台に到着していた。 「ほんまに会場一周してるやん!2キロ?2万キロ?」 「2万キロあったら万里の長城の長さやん!」 ちなみに、リングは正確には2025mで西暦と同じである。 「次あれ行こう!」 「よし!」 ここからパビリオンを見下ろせる為、アタリをつけるのに最初に登ればよかったと、俺はこれから行く人に教えてあげたくなった。 (つづく)
2025.06.07
野球評論家・佐野慈紀氏がシカゴ・カブスの鈴木誠也の活躍にスポットライトを当てた。 メジャー4シーズン目の鈴木はレギュラーとしてチームに欠かせない選手となっている。6月2日時点で打率2割6分9厘、14本塁打、打点52とナ・リーグトップクラスの成績だ。チームも首位をキープしている。 佐野氏は「何よりも右打者でポイントゲッターとして活躍しているのはすごいですよ。この勝負強さはチームにとってもすごい助かります」と指摘。左打者はこれまでも松井秀喜氏、イチロー氏、現在の大谷翔平など成績を残してきた選手はいるが右打者は少ないとあって、高く評価した。 日本のメジャー報道といえば、ドジャースの大谷にばかりスポットライトが当たっているが、鈴木の活躍も十分評価に値するものだ。 佐野氏は「もっと鈴木誠也の活躍にも注目が集まってほしいですね」とエールを送った。
2025.06.06
蔦重が世に送り大ヒットした『吾妻曲狂歌文庫』は、絵と狂歌を並べる狂歌絵本という新しいタイプの狂歌本の走りとなった。大田南畝、唐衣橘洲、朱楽菅江の3巨頭の名は江戸の大人から子供にまで知られ、狂歌連に集まる狂歌師たちからは「狂歌四天王」などと呼ばれるスターたちも生まれたという。 「才人が即興で作った面白い作品を、芸名とポートレートともども媒体に乗せる」という意味では、現在の日本テレビ系『笑点』と通じなくもない。媒体の進歩とアイデアのなせる技、というわけだ。 以降、蔦重が出す狂歌本や戯作に掲載する挿絵の描き手として若い絵師たちが蔦重に見いだされ、腕を磨く。その代表が喜多川歌麿、葛飾北斎という後の浮世絵のスーパースターである。 蔦重には当時から「侠気がある」という世評があった。少し後だが1856(安政3年)の『戯作者小伝』には、蔦重について「文才ある者の若気に放蕩なるをも荷担して、又客として財を散ずるを厭はざれば、是がために身を立て名をなせし人々あり」と記している。 要は、若くて才能のある面々に自らカネを出して(吉原で)大いに遊ばせ、その成長を見守る。若い面々はそれを意気に感じて蔦重の下で大いにその能力を発揮する、というわけである。(つづく)
2025.06.05
「予約なしでも入れるパビリオンは沢山ありますよ」 予約抽選に外れて愕然としていた俺と母に、係員の方から吉報が舞い込んだ。 「見て!アラブ首長国連邦館が30分待ちやで!」 お目当てではなかったが、ともかくパビリオンに入れる喜びは大きい。 早速並ぶと、10分も経たない内に中に入れることになった。 「なんじゃこりゃ~」 懐かしい松田優作のモノマネで興奮する母であるが、それもそのはず、アラブ首長国連邦館は見渡す限り巨大なナツメヤシの樹で埋め尽くされている。 「大きい!大きい!大きい!」 と、今度は懐かしい淀川長治のモノマネで俺も興奮した。 続いてカタール館、ベトナム館にも10分ほどで入館し、俺と母は子供の頃の社会科見学のように盛り上がった。 「大屋根リング行くで!」 休憩する間もなく母が言った。 そうだ、大屋根リングは外せない!世界最大の木造建築に認定された万博の目玉だ。 「明るい内に登るで!」 母が俺より早足で歩き出した。 (つづく)
2025.06.05
野球評論家の佐野慈紀氏が阪神の守護神・岩崎優(いわざき・すぐる)投手の〝調整術〟に注目している。 阪神は交流戦を前に首位でフィニッシュ。投打のバランスの良さが光っている。 佐野氏は現役時代、中継ぎ投手として活躍。その経験を元に「リリーバーっていうのは6月の頭が1つの鍵なんです。開幕から飛ばしていると、この時期で息切れしてしまって、そのままダメになるケースも多い。ここを乗り切れるかが大事」と話す。 岩崎は4月の防御率3.72、5月は1.69と尻上がりに調子を上げているが「ベテランなんで調整の仕方が分かっている。僕も現役の時は6月はランニングの量を減らすなど、スタミナを維持することを心がけてました」と評価した。 かつて佐野氏は岩崎のストッパー適性を見抜き、岩崎のストッパー転向を決めた金本監督(当時)に意見を求められた際には「絶対にストッパーが合っていると話しました」(佐野氏)と進言したこともあるという。 今後も注目だ。
2025.06.04
酒井抱一は江戸初期の俵屋宗達、尾形光琳に連なる、いわゆる「琳派」の巨頭の1人。琳派は金銀箔や鮮やかな色彩、花鳥風月をモチーフとしたデザイン性で知られる、日本美術史に残る一派である。 姫路藩の世嗣・酒井忠仰の第4子という名家出身の抱一は画家・文化人である一方で尻焼猿人(しりやけのさるんど)――真っ赤なケツの猿という狂名で活躍していた。 当時20代前半だったこの大物と、一回り近く年上の蔦重との厳密な接点は不明だが、江戸の酒井家藩邸を拠点に、他の大名子弟のボンボンたちと遊び回っていた抱一が吉原で蔦重と接点を持ち、蔦重が赤良・橘州と抱一が同席する宴席を設けたとしても違和感はない。 こうして狂歌の3巨頭を独占するに至った蔦重のプロデューサー的手腕は、恐らく当時の他の地本問屋の発想の外であったろう。 同じ1785(天明5)年冬に刊行した『夷歌百鬼夜狂』は、江戸・深川でこの3巨頭を含む15人ほどの狂歌師が集まり、妖怪やお化けを題材とした百首を収めた狂歌本。「百物語」よろしく100本のロウソクを灯し、一首よむごとに1本ずつ消しながらよんだという。 翌1786(天明6)年の『吾妻曲狂歌文庫』は、狂歌師50人の肖像画を北尾政演が1人1人色鮮やかに描き、そこへ個々がよんだ狂歌1首を赤良が書き込むという百人一首を模した大型の豪華本。高価にも関わらず大ヒットとなった。その後も狂歌師を100人に増やしたバージョンも刊行し同様の売れ行きを見せるなど、狂歌本は蔦重の独り勝ちとなった。(つづく)
2025.06.02
野球評論家の佐野慈紀氏が首位争いを続ける「日本ハムファイターズの強さ」について語った。 佐野氏は「選手がかなり自信を持って試合に臨んでいるのがありありと分かります」と切り出す。 「新庄監督はパフォーマンスが派手な部分が注目されてましたが、彼の野球観ってすごくシンプルです。バッティングも守備も『基本に忠実』。それを指導者として選手たちにぶつけています」 野球で1番大切なことは「細かくいうとチームプレー。先の先の先まで目を配らないといけない。こういう感覚を監督が持っているチームというのは強いです」と佐野氏。 さらに「新庄監督は選手のいいところを伸ばそうとしている。例えば万波選手、センターでもいいが、彼の肩はライトが一番生きる。時間はかかりましたが、清宮選手を覚醒させたのも監督とスタッフの手柄だと思います」と絶賛した。 今年は新庄監督の胴上げシーンが見れるか。
2025.06.01
狂歌ブーム元年となった1783(天明3)年当時、三大狂歌師と呼ばれていたのが四方赤良のほか唐衣橘州(からころもきっしゅう)、朱楽菅江(あけらかんこう)の3人。このうち四方と橘州がその作風の違いから厳しく対立していた。貴族風の温和で雅な作風の橘州は、江戸っ子らしい機智に富んだ赤良のそれを公然と批判した。 それはお互いの狂歌連というサロンどうしの対立にも波及する。赤良・菅江編『万載狂歌集』と並ぶ『若葉集』は橘州が編さんしているが、赤良は意図的に編者から外されている。対立の根はそれだけ深かったのだ。 この赤良・橘州の間を取り持ったのが、他ならぬ蔦重だった。 1785(天明5)年、蔦重は狂歌本を次々と世に出す。まず『故混馬鹿集』――無論、『古今和歌集』のパロディ――が先の『若葉集』『万載狂歌集』と並び称されるほどの大ヒットとなったが、重要なのは次の『狂歌評判/俳優風(わざおぎぶり)』だ。『俳優風』に掲載する狂歌の選者に菅江だけでなく犬猿の仲だった赤良、橘州の名がいっしょに並んでいるのである。 蔦重が赤良、橘州の仲介役として連れてきたのが、『俳優風』にピックアップされた狂歌師の最高位の称号を得た「尻焼猿人(しりやけのさるんど)」という狂名を持つ人物だった。 その正体は、何と日本美術史に残る「琳派」の大物、酒井抱一だった。(つづく) 主な参考資料:松木寛著『蔦屋重三郎 江戸芸術の演出者』日本経済新聞社 鈴木俊幸『蔦屋重三郎』平凡社
2025.05.30
野球評論家の佐野慈紀氏が「西武の復活」について語った。 佐野氏は昨季、歴史的な低迷から今季〝奇跡の復活〟を遂げているライオンズに「やっぱり、やっぱり、西武が強いんですよ! 去年、優勝候補に推して、さんざん周りに突っ込まれたんですけど!」と苦笑交じりに切り出す。 特に好調なのが投手陣だ。昨季、まさかの開幕11連敗を喫し、シーズン通して勝ち星がなかった高橋光成(こうな)も待望の勝ち星をあげた。 「光成投手も勝って、今井投手も無双状態。隅田投手もいい。投手陣が安定していて、打線がかみ合えば、いまの順位は決してブラフじゃないと思いますよ」 王者ソフトバンクがいまいち調子が上がってこない中で、西武にもチャンスがありそう。今シーズンは〝レオの乱〟から目が離せない!?
2025.05.30
野球評論家の佐野慈紀氏が〝混セ〟をリードする阪神タイガースについて語った。 藤川新監督率いるタイガースは接戦が続くセ・リーグで安定した戦いぶりを続けている。 佐野氏は「ピッチャーが揃っているのはもちろんなんですが、やっぱり走力なんですよね。先の塁に対しての意識が高い」と話す。 「やっぱりピッチャーにとっては煩わしいものなんですよ。次の塁を積極的に狙われるというのは。元々、走る選手が多いチームですが、ベンチの考えが選手に伝わってると感じます」 走ることへの意識は「もしかしたら、前任の岡田監督の〝遺産〟かもしれませんね」と岡田前監督がチームに植え付けた意識の部分が大きいのではないか、という。 熱血ぶりが目立つ藤川監督には「ああやって感情を表に出して、チームを鼓舞する監督は〝闘将〟星野元監督以来じゃないですか。おとなしい選手が多いチームにはいいエッセンスになっているのでは」と語った
2025.05.28






