連載•小説

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老中を罷免され、知行を召し上げられ……田沼意次の転落
老中を罷免され、知行を召し上げられ……田沼意次の転落

 1786(天明6)年8月25日、10代将軍・家治が死去すると、田沼意次とその一派は立ちどころに転 落していった。2日後の27日には収賄を理由に老中職を罷免され、知行5万7000石のうち2万石が 召し上げられ、閉門を命ぜられた。ヘビーな措置だが、この辺りは御三家・水戸徳川家の6代当 主・治保(はるもり)の差配によるものだ。 意次はさらに屋敷に踏み込まれてチェックを受け、物品が没収され封印が貼られた。さすがに 色々とため込んではいた模様で、江戸の蔵にはコメ32万8000石余り、大豆3万石、小豆2万石。 故郷の遠州相良城内にはコメ173万6700石、大豆42万3000石、金47万2800両があったという。 この治保宛てに、「家柄と才覚のある者を老中に据えて、吉宗公のような政治を行わせたい。 その人物については、多少なりとも心当たりがある」と手紙を出した者がいた。他ならぬ一橋 治済だった。「心当たり」はもちろん松平定信である。 「家治公より頂いた2万石の没収だけでは罰が軽すぎないか?」と、治保と尾張家の9代当主・ 宗睦(むねちか)が連名で治済に問い合わせたが、治済は当の黒幕でありながら、「当時の役人 に潔白な者はいないし、事情を理解せぬままいろいろご沙汰をすると民衆の間に不信感が募る から」と素知らぬ顔で返答している。(つづく)

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2025.07.14

好評連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』vol.29 『人生で初めてのマリオカート』
好評連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』vol.29 『人生で初めてのマリオカート』

先日、生まれて初めて『マリオカート』というゲームをやったら、車酔いした。 場所はスーパー銭湯にあるアーケードゲームである。 俺は湯上がりにビールを一杯呑んでいた心地良さもあってか、今、プレイしなければこの さき一生することはないだろうとコインを入れた。 一瞬、これは飲酒運転ではないのかと不安になりながらハンドルを握ると、マリオの顔の 中に、その場で撮影された俺の顔が現れた。誰なんだこいつ!と困惑している内に画面は スタート地点に変わり、ハンドルを切ってないのに俺の車が走り出した。 うねうねした道を進む感覚は、夢の中で車を運転しているのに酷似している。俺は車酔い のような気分になりながら、どうにかゴールまで辿り着いたのだが、続けるには課金が必 要だった為、そこでやめることにした。 運転免許を持ってない俺は、飲酒運転の疑似体験をしたような気持になった。 次に来た時は、ビールは『マリオカート』のあとに呑もうと思った。

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2025.07.13

佐野慈紀のシゲキ的球論    日本ハム、ソフトバンク、オリックスの三つ巴!抜け出すのに必要なのは「どん詰まりのポテンヒット」
佐野慈紀のシゲキ的球論  日本ハム、ソフトバンク、オリックスの三つ巴!抜け出すのに必要なのは「どん詰まりのポテンヒット」

パ・リーグの上位チームの戦いは息苦しい緊張感が続く。  佐野氏は「日本ハムがゆいいつ、頭1つ抜け出しそうな感じですが、それをソフトバンクとオリックスが必死に追いかけているという構図がオールスター前までは続きそうです」と解説する。  現役時代もシーズンの「流れ」について、いろいろな経験をしてきた佐野氏は「実は流れがくるのって、意外とささいな事から始まることが多いんですよ」と明かす。 「例えば、相手チームにリードを許しての試合。二死一塁のチャンスが来たが、対戦投手が良すぎて点はなかなか取れそうにない。そんな中できれいなヒットではなくて、『どん詰まりのポテンヒット』で点が入った。ちょっとしたあやで『勝ちを拾えた』。そういうゲームで流れが来たりするものなんです」  逆に言えば「目に見えないミス。こういうのが出てくると、ほころびがでてくるものです。上位チームはそこに気を付けていかないといけませんね」と指摘。  最後は「私も現役時代で痛感しましたが、やっぱり当たり前のことを当たり前にやってるチームが最後には勝っていると思います」とした。

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2025.07.13

佐野慈紀のシゲキ的球論    阪神強い!「後ろに〝大将〟がいるからやったろうぜ! という感じ」と佐野氏
佐野慈紀のシゲキ的球論  阪神強い!「後ろに〝大将〟がいるからやったろうぜ! という感じ」と佐野氏

阪神が独走態勢を整えつつある。 「広島、巨人、横浜など、ほかのチームの戦い方を見ても、勢いがつくような戦い方をしていません。反発するような感じがない」と佐野氏は言う。  チームの強さの理由はは「藤川監督のビジョンというものをチーム全体が把握しているというのが大きい。藤川監督を選手が信頼している」と佐野氏は指摘する。 「岡田監督の時はやっぱり、レジェンド監督なんでね。厳しい面もある。選手が岡田監督の目とか呼吸など、いろんな所を気にしていたと思うんですけど、いまのチームにはそういうピリピリした部分は感じられない。大げさに言うと『うしろにうちらの大将がいるからやったろうぜ!』というのを感じる」(佐野氏)  その証左として佐野氏は森下を例にあげる。 「森下選手を見ていても風通しがいいのを感じますね。どちらかというやんちゃな発言が多い選手ですが、のびのびとやっている。岡田監督のもとではおそらくできなかったでしょう」。  最後には「どちらかといえばこれまでは近本のチームだったが、いまは森下、佐藤輝がチームを引っ張りだした。それが周囲にもいい流れを呼び込んでいると思います」と締めくくった。  

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2025.07.11

オランダ商館長「殺す相手は息子ではなく父・意次のはずだった」
オランダ商館長「殺す相手は息子ではなく父・意次のはずだった」

 オランダ商館長ティチング『日本風俗図誌』には、先に述べたような田沼意知暗殺時の詳しい 状況とともに、「諸事情から察するに、幕府の最高位にいる数名がこの事件に関与しており、 この事件をそそのかせたように思われる」と、かなり明快な記述が残っている。 さらに、「もともとこの暗殺の狙いは、田沼主殿守(意次)と山城守(意知)改革を妨げるた めに、その父親のほうを殺すことにあったとも言われている」として、将軍家治と昵懇な意次・ 意知親子の一族が続々と要職に就き、改革を進めていく流れを止めるには、高齢の意次より息 子を亡き者とすれば、意次にもこれ以上の痛撃はない、とい断定調の記述があるのだ。 さすがに暗殺の首謀者について実名では書かれていないが、あまりに詳細な記述には相当の信 用を置いてもよいと思われる。ティチングは「才幹あり進取の気性に富む山城守(意知)に大 いに期待されていた」と、意知について日本の将来を考えるただ1人の人材だったと評価し 、「意知が殺されたことで、日本が外国人に開放され、日本人が他国を訪問する時代が来ると いう希望はまったく絶たれてしまった」と残念がっている。(つづく)

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2025.07.10

佐野慈紀のシゲキ的球論   「なぜ鈴木誠也選手がメジャーのオールスターゲームに選ばれなかったんだ! 残念!」
佐野慈紀のシゲキ的球論 「なぜ鈴木誠也選手がメジャーのオールスターゲームに選ばれなかったんだ! 残念!」

 シカゴ・カブスの鈴木誠也選手がオールスター漏れしたことに全米でも失望の声が上がっているが、佐野氏も同じ思いだ。    鈴木はメジャーでも「打点生産機」とチャンスでの強さが評価されていて、7日終了時点では77打点とメジャートップの成績を残している。本塁打も25本放っていて、オールスター出場には申し分ない。    佐野氏は「日本人の左打者ではイチロー、松井、大谷といますが、右打者でこれだけの成績を残している選手はいない。現時点で打点トップですから、オールスターに選ばれても全然おかしくない」と悔しそう。   「いまのメジャーはジャッジや大谷という派手なパフォーマンスにスポットライトが当たっていますが、シカゴのファンたちの鈴木に対する期待値も相当なもの。声援からそれを感じます」    最後には「オールスター漏れは残念ですが、こうなればシーズン通して頑張ってほしい。本塁打30本は期待したいですね!」とエールを送った。    

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2025.07.09

好評連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』vol.28『国宝自慢』
好評連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』vol.28『国宝自慢』

 映画『国宝』を観て来た。評判通り良い映画だったのだが、3時間は長く、尿意と眠気、 そして時計を気にしていた。だったら良い映画じゃないだろ!と思われるもしれないが、 結果、評判通り良かった。 なぜそんな複雑な感想なのかというと、俺は原作を読んでいたからである。既に脳内には 想像していた映像があり、映画では随分イメージと違っていた。登場人物の一部がいなか ったり、AのエピソードがBに変わっていたり、ラストが違ったり。と言い出したらキリ がないのだが、800ページある原作の多くの場面をカットしたにもかかわらず3時間の 脚本を成立させ、文字では伝わりきらない歌舞伎のシーンの素晴らしさ、何よりも俳優の 演技を観た結果、良い映画だったのだ。 鑑賞直後は、原作未読なら純粋に楽しめたのかもと思ったが、しばらく経った今、両方知 って得した気分になっている俺は、『国宝』のことをもっと知ってるぜ!と国宝自慢をし たくなってきている。

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2025.07.09

椎野礼仁のTANKA de 爺さん 第14回 『鉄道兵だった父』
椎野礼仁のTANKA de 爺さん 第14回 『鉄道兵だった父』

右の目がほとんど効かない父だった 「乙二合格」徴兵検査 終戦の間際に召集されたとき26歳 会社勤めの 26で入った部隊は父だけじゃなくて創痍の新兵ばかり しゃべれない、動作がのろま、耳がダメ。そこに目がダメ、二等兵父 「椎野! 前へ 軍人勅諭を述べてみよ」点数稼ぎの上官の指名 「『軍人勅諭』暗唱できたおかげでな、そんなに殴られないですんだ」 父は大正8年生まれ。敗色濃厚の中、満州へ送られ、南満州鉄道の防衛の部隊へ配属された。 夜、列車に乗り込み、一定の間隔で一人ずつ線路際に降ろされて、線路を守れと命じられる。あかりとてない真の闇。カサッと草がなれば、ちじみ上がった。 朝、気が付くとみんな、一か所に集まっていたという。そういうものだと思う。 (この稿、続く)

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2025.07.07

田沼意知暗殺の詳細を、オランダ商館長が記録していた
田沼意知暗殺の詳細を、オランダ商館長が記録していた

 老中・田沼意次の子、意知が暗殺された直後、江戸市中でよまれた落首「「鉢植えて/梅が桜と 咲く花を/たれたきつけて/佐野に斬らせた」は、歴史の教科書にも頻出している謡曲「鉢の木 」をもじったものだ。 旅の僧、実は名執権・北条時頼をもてなす際、薪の代わりに大事な鉢の木を切って焚いた貧し い御家人・佐野源左衛門常世の「佐野」を佐野政言の「佐野」に重ね、誰かが政言をたきつけ て桜や梅の木=意知を襲わせたという暗喩である。意知を桜や梅になぞらえているのを見ると 、意知の能力と将来性に期待していたよみ手の隠れた本音も汲み取れそうだ。 いずれにせよ意次にとっては実の息子を殺害されたことと、自らが持つ権力や推進中の政策・ プロジェクトを引継ぐ相手を不意に失ってしまったという意味で、二重の打撃となった。 ここで再び、オランダ商館長ティチング『日本風俗図誌』の記述を見てみよう。ティチングと母 国のオランダは、開国政策の引き継ぎ手として意知に対する期待が非常に大きかったことが、 同書の記述からもうかがい知れる。それだけに、その暗殺の状況についてはかなり詳しく書き 遺している。ティチングには幕府のそれなりのポジションにある高官に「ネタ元」がいたよう だ。(つづく)

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2025.07.07

好評連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』vol.27 『禁煙して良かったこと』
好評連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』vol.27 『禁煙して良かったこと』

 禁煙して10年になるが、たまに夢の中で吸っていることがある。そんな時は罪悪感と同 時に、なぜやめているのだろう?と夢の中で真剣に考えている。そして毎回目覚めて、良 かった!と安心するのだが、確かに俺はなぜ禁煙したのだろうか?医者に止められた訳で もない。 昔は煙草なしの生活はあり得なかった。持ち忘れぬよう上着、ズボン、鞄など何箇所もの ポケットに入れていた。 だが、それだけ入念な準備をしている割には、ライターを家に忘れて新品を買うことがよ くあった。おかげで俺の家にはチルチルミチルのライターが大量にあった。そんなにある のなら、すべてのポケットに忍ばせておけばよいものだが、どういう訳だかそれはしなか った。 禁煙した今こうやって振り返ってみると、結局、やめた理由は煙草のことを考えるのが面 倒になったからなのだろう。 そして禁煙して良かったことは、この先、煙草のことを一生考えなくてもよくなったこと ではないだろうか。

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2025.07.06

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