連載•小説

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椎野礼仁のTANKA de 爺さん 第21回 家無き男たち 新宿駅編
椎野礼仁のTANKA de 爺さん 第21回 家無き男たち 新宿駅編

家無き男 新宿駅編 次々と釣り銭の口ふれて行くルーティンワークこなすかのように 何台の電話を探れば十円が拾えるのだろう 新宿駅の ずらり並んだ公衆電話が撤去さる そこに糧を得る存在を知らず 公衆電話の代わりにコイン探すのは自販機の下か のぞき込んでる 新宿駅の西口広場(今は工事中で広場の面影はないが)に面して、かつては緑色の公衆電話が数十台、並んでいたことがあった。そこで電話していたら、電話機の右下にある釣銭口にさっと指を突っ込んでいく男がいた。淡々と、そして足早に次の電話に。 かつての公衆電話は、時間による従量制で、例えば100円玉を入れて電話をして、70円分の分数しか掛けなかった時は、3枚の10円玉がジャラと釣銭口に戻ってきた。その取り忘れをさぐっていた。足早に去っていくその男の背中からは、何の感情も読み取れなかった。 僕の短歌は「スナップ短歌」と自称している。日常生活の中で、印象的な景色やシーンに出会ったとき、スナップ写真を撮るように、五七五七七で定着する。今で言うと写メ短歌という方が分かりやすいか。 この新宿駅の男の背中が皆さんにもよみがえれば、作者冥利に尽きる。

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2025.08.25

NOと言えない行司に出版OKと言わせた蔦重の自責の念
NOと言えない行司に出版OKと言わせた蔦重の自責の念

山東京伝が課された手鎖という刑事罰は、牢には入らぬものの、両手を瓢箪型の鉄製の手錠で 前に組んだ状態に固定し、そのまま一定期間自宅等で謹慎させる罰。30日、50日、100日の3通 りで、期間中は役人が監視も兼ねて封印を点検しに来る。食事や便所にも人の手を借りなけれ ばならず、日常生活全般に大きな支障があったという。これは精神的にかなりヘビーなペナル ティである。 蔦重は、自身の財産を半分没収された。幕府側から見れば唐来参和、朋誠堂喜三二、恋川春町 と3名の札付き戯作者にいかがわしい本を書かせて大儲けした版元とであり、目をつけていたの は間違いない。蔦重本人もその辺りは重々承知していたはずである。 蔦重は地本問屋仲間に行司を設けよとの幕府の命令の裏をかいて、自分に対してノーと言えな い行司を選んでおいたのだが、その行司2人は軽追放の憂き目を見る。これは居住地および罪を 犯した地域のほか、江戸10里四方(約20キロ圏内)、京都、大坂、東海道筋、日光および日光 道中への立ち入りを禁じた刑罰だった。 さすがに自責の念にかられたのか、蔦重はこの2人への選別にいくばくかの金子を渡したと言わ れている。(つづく)

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2025.08.25

佐野慈紀のシゲキ的球論  投高打低のセ・リーグに「僕は〝雑〟なバッターが増えたなと思います」と佐野氏がカ ツ!
佐野慈紀のシゲキ的球論  投高打低のセ・リーグに「僕は〝雑〟なバッターが増えたなと思います」と佐野氏がカ ツ!

セ・リーグの首位打者争いが低調だ。3割打者が不在の状況に佐野氏は 「バッター陣があっさりアウトになってしまっている。だから、打率も上がってこないと いう部分もある」と分析する。 「長打を打てる打者がチームに1人か2人しかいなくなった。それはセ・リーグが顕著で すよね。いまホームラン打てる打者といえば、パッと浮かぶのは佐藤輝、村上、岡本ぐら いですからね」(佐野氏)  変化球の種類が増えたことや投手交代のタイミングなど、打者の対応が難しくな っている部分もあるが「決して〝勝負が早くなった〟わけじゃない。ファールで粘ったり する。当てにいくバッターが多い割に、粘りの意味でのファールが打てない。自分のスイ ングができていない」という。  一方で現在、打率上位を独占している阪神の打者陣といえば、四球をしっかり選ぶこと にも定評がある大山悠輔など、状況に応じて打ちに行く、粘るなど、戦況を判断できる姿 勢も称賛されている。  もちろん大前提は技術を身に着けているかという点。今後はDH制の導入も話題になっ ているセ・リーグの野手はどう変化していくかも注目となりそうだ。

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2025.08.24

佐野慈紀のシゲキ的球論  ベイスターズ・藤浪晋太郎投手対策で左打者9人並べたドラゴンズに「これ、はっきり 言います! 作戦失敗ですよ」
佐野慈紀のシゲキ的球論  ベイスターズ・藤浪晋太郎投手対策で左打者9人並べたドラゴンズに「これ、はっきり 言います! 作戦失敗ですよ」

 藤浪は17日の中日戦(バンテリンドーム)に登板。5回1失点と〝合格点〟の投球内 容で、勝ち星こそ付かなかったがしっかりとゲームを作った。  佐野氏は「ボールが抜けるのは本人も分かっている。右打者がいたほうが藤浪もプレッ シャーになるんですよ。それが全員左打者だったら、思いっきり投げられるじゃないです か。そういう風な考えに中日サイドはならなかったんですかね。そこに気づかないとダメ ですよね」とあきれた。    ただ、投球そのものは「メジャーにいた時とそれほど変わっていないですね。本人が次 の登板に備えるかが注目です」とも指摘した。  とはいえ、復帰してゲームを作ったのは評価に値するところ。 「初戦にしっかりと結果を残せたのは本人も安心しているでしょうね。次のゲームからは 相手チームも左打者ばっかりということもないでしょう。どういう風な登板になるのか楽 しみになりましたね」と佐野氏は語った。

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2025.08.22

山東京伝は手鎖50日の刑、蔦重は財産を半分没収される
山東京伝は手鎖50日の刑、蔦重は財産を半分没収される

1791(寛政3)年正月、蔦重は山東京伝の黄表紙4点と洒落本3点をリリース。しかしその2カ月 前の10月、出版の準備が佳境にあったタイミングで、幕府から地本問屋に「風俗之為に不相成猥 ケ間敷」書物、つまり「風俗・風紀に反するみだらな行為や内容の書物」は禁じることを徹底 せよ、という町触れが出されたのだ。 そんな状況下で、よりによって吉原を題材にした洒落本を3点を出すのは、誰の目にも危険に思 えた。が、すでに版板も出来上がり、今さら引き返せない状況にあった蔦重は、いったん仲間 内の行司に見せて販売OKの言質を取り、予定通り正月に間に合わせたのである。 もっとも、地本問屋仲間の行司とは、実は仲間内の仕切り役とは到底言えないのが実情だった 。行司には版元の下請けに当たる者を選び、蔦重ら版元側にノーと言わせない人選を行ってい たのだ(このあたり、大河『べらぼう』がどう描写するのか気になる)。 さすがにこのやり方は通用しなかったようだ。リリース後、程なくして奉行所から呼び出され た蔦重と京伝は取り調べを受けた揚げ句、この町触れに違反したかどで京伝は手鎖50日、蔦重 は何と財産を半分没収されるという非常に厳しいペナルティを課されたのだ。同年3月のことで ある。(つづく)

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2025.08.21

好評連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』vol.38『決定ボタンをクリック』
好評連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』vol.38『決定ボタンをクリック』

先日、欲しかった古本の全集があった俺はネット検索していた。見ると、相場は約7万円 。高い!俺の家賃よりも高い!すぐに諦めたのだが、そんななか6千円で売られているサ イトがあった。そこには、比較的きれいな商品の写真と、残り一点という表記があった。 ラッキー!俺は速攻で「カートに入れる」をクリックすると、そのあと住所やカード番号 を入れた。だが、「決定」ボタンを押そうとした矢先、ふと、手続きしているサイト名を 聞いたことがなかったので、急に評判が気になった。一応調べてみよう。と検索をかける と、真っ先に「詐欺」の文字と騙された人々の体験談が出てきた。怖い!もし酒でも飲ん でたら判断力が鈍ってクリックしていたかもしれない。 誰もが自分だけは詐欺にあわないと思っているが、欲しい物を前にすると人は掴もうとす るのが本能なのだろう。反省した俺は、これからは心の中に「決定ボタンを決定しますか 」ボタンを準備することにした。

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2025.08.20

佐野慈紀のシゲキ的球論    メジャー1年目で2桁勝利! オリオールズ・菅野智之投手に「しっかりゾーンの中で勝負できている」と大絶賛
佐野慈紀のシゲキ的球論  メジャー1年目で2桁勝利! オリオールズ・菅野智之投手に「しっかりゾーンの中で勝負できている」と大絶賛

菅野が日本人投手として10人目となるメジャー1年目での2桁勝利を達成した。    佐野氏は「チーム状況がそんなに良くない中で、勝ててるというのは凄い。先発してゲームを作っている。彼が先発した試合の勝率も良いですからね」と話す。   「しっかりゾーンの中で勝負できているし、抑えている時はゲームを完全に支配している。打者を〝のんで〟しまっている。そこが素晴らしいですね」(佐野氏)    メジャー挑戦にも「ここまで順応できると思っていなかった。素晴らしいですよ。大谷選手のドジャースが目立っていますが、菅野投手ら、ほかの日本人投手もメジャーで頑張っています」とたたえた。    菅野投手の今後の活躍に期待だ。

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2025.08.20

椎野礼仁のTANKA de 爺さん 第20回 家無き男たち 昭和通り編
椎野礼仁のTANKA de 爺さん 第20回 家無き男たち 昭和通り編

人が住むと主張するのか手ぬぐいと靴下つるす歩道橋下 ダンボール抱え小型の犬つれて昭和通りに明かりつくころ 脂気の匂いなき湯を洗面器に沸かして彼らの夕餉始まる 人々が距離を保って行きすぎる ならばと真横を通って帰る ホームレスがなぜか気になる 向こうから見られる俺はどう映るのだ 最後の歌に書いたが、ホームレスって気にならないだろうか。もう何十年も前から、目に入るようになった。 転職し会社の場所が変わるたびに、そこにまた「家無き男たち」を見つけてしまう俺がいた。本当に自分でもよくわからない。高橋伴明監督の映画「夜明けまでバス停で」で描かれているように、あそこまでバックボーンを想像して思い入れているわけではない。わけもなく気になる。 よくわからないまま、次回・次々回は違う街の家無き男たちの短歌を読んでいただきたい。

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2025.08.18

書きたくない売れっ子作家を説得した蔦重の似顔絵
書きたくない売れっ子作家を説得した蔦重の似顔絵

朋誠堂喜三二、恋川春町の2本柱を失った蔦重にとって、最後の切り札は黄表紙の金字塔『江戸 生艶気樺焼』の著者、山東京伝だった。蔦重プロデュースの下、遊郭での粋な遊び方や男女間 の機微を扱った洒落本で大ヒットを連発、後に江戸文学史に残るビッグネームである。 しかし1790(寛政2)年、京伝自身が北尾政演の名で挿絵を描いた別の版元の黄表紙が幕府当局 の摘発を受け、作者が江戸追放、自身も罰金刑の憂き目にあったのをきっかけに、執筆活動に 嫌気がさしたようだ。京伝が吉原の妓楼「扇屋」の遊女・菊園を落籍したこともそれに拍車を かけた。 ここで京伝にやめられては大打撃となる蔦重は、京伝を懸命に説得したと思われる。翌1791( 寛政3)年正月、蔦重のもとで黄表紙4点と洒落本3点をリリースしたが、その中の1つ『箱入娘 面屋人魚』の中で、蔦重がわざわざ自分の似顔の挿絵入りで、京伝が執筆を継続するに至った経 緯を「まじめなる口上」として読者に報告している。(つづく)

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2025.08.18

佐野慈紀のシゲキ的球論  阪神・石井大智の圧倒的な存在感に「藤川監督の現役時代に並んでいる」と絶賛
佐野慈紀のシゲキ的球論  阪神・石井大智の圧倒的な存在感に「藤川監督の現役時代に並んでいる」と絶賛

石井がトラの〝絶対的守護神〟への道を歩んでいる。9日のヤクルト戦では藤川監督に 並ぶセ・リーグ記録の38試合連続無失点を達成した。  佐野氏は「独立リーグ(高知)から上がってきて、しっかり結果を残している。凄いで すよね」と賞賛する。6月には頭部に打球が直撃するアクシデントに見舞われたが、そん な影響も感じさせない快投劇だ。  投手としての良さについて佐野氏は「抽象的な表現になってしまって申し訳ないんです けどね、やっぱり『投げっぷり』がいいんですよね!」と言う。 「もともとシンカーがいいと思っていたんですが、このシーズンはストレートがいいです よね。数字を見たことはないですが、おそらくスピン量が凄いでしょうね」(佐野氏)  その存在感に、かつて阪神の守護神として君臨した藤川監督の現役時代を重ねる。「今 シーズンの成績を見れば、藤川監督の現役時代と遜色ないと言ってもいい」と佐野氏。  石井の存在はファンにとっても頼もしいところだ。

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2025.08.17

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