政治•経済
4月、トランプ大統領が導入した「相互関税」政策は、世界経済に大きな波紋を広げている。この政策は、すべての輸入品に一律10%の関税を課し、日本には24%、中国には104%(後に125%に引き上げ)など、貿易相手国ごとに異なる高関税を上乗せするものだ。これにより、国際貿易秩序は第二次世界大戦後最大の転換点を迎え、報復関税や経済的混乱が各国で懸念されている。なぜトランプ大統領はここまで関税にこだわるのか。その背景と理由を、経済的・政治的・外交的観点から簡単に整理してみたい。 関税政策の核心 貿易赤字の削減と国内産業の保護 トランプ大統領が関税を重視する最大の理由は、アメリカの巨額な貿易赤字の是正と国内製造業の復活にある。アメリカの貿易赤字は巨額に膨れ上がり、特に中国や日本、EUとの間で大きな不均衡が生じている。トランプ氏は、これを「アメリカが他国に食い物にされている」状態と捉え、関税を課すことで輸入品の価格を上げ、国内生産を競争力のあるものにしようとしている。理論的には、輸入品が高価格になれば、企業はアメリカ国内での生産を増やし、雇用創出や経済成長につながると考えられている。 例えば、日本からの自動車輸出はアメリカへの輸出総額の約3割を占めるが、24%の関税により価格競争力が低下する。これにより、アメリカ国内での自動車生産が増え、製造業の雇用が回復する可能性がある 外交ツールとしての関税:交渉の「武器」 トランプ関税のもう一つの特徴は、貿易政策を超えた外交ツールとしての活用だ。関税は単なる経済政策ではなく、相手国に政策変更を迫る「強制の武器」として機能している。例えば、フェンタニルなど違法薬物の流入阻止や不法移民対策を理由に、メキシコやカナダ、中国に対して関税をちらつかせ、譲歩を引き出そうとしている。このアプローチは、トランプ氏が「ディール(取引)の達人」として自負する交渉スタイルを反映している。 実際に、2025年4月に発動した相互関税は、報復措置を取らない国に対して90日間の猶予を与えるなど、交渉の余地を残している。日本とは石破首相とトランプ氏の電話会談後、閣僚レベルでの協議が始まり、関税率の引き下げや適用除外を目指す動きが見られる。このように、関税は相手国との交渉を有利に進めるための圧力手段として、トランプ政権の外交戦略の中核を担っている。 政治的パフォーマンスと支持基盤へのアピール トランプ氏の関税政策は、経済的合理性だけでなく、国内の政治的アピールも強く意識されている。彼の支持基盤であるブルーカラー層や保守派は、グローバル化による製造業の衰退や雇用の海外流出に不満を抱いている。関税は「アメリカ・ファースト」を体現する政策として、こうした有権者に直接訴えかける。2024年の大統領選で掲げた公約の一つが、関税によるアメリカの再強化であり、選挙戦での強いメッセージが政策に反映されている。ただし、関税による物価上昇がアメリカ市民の生活を圧迫し、支持率が低下する兆しも見られるため、政策の一貫性や調整が今後の焦点となる。 トランプ関税の今後の展望 トランプ関税の背景には、貿易赤字削減、国内産業保護、外交的圧力、そして政治的アピールという多層的な狙いがある。しかし、関税戦争の激化や金融市場の混乱を受け、トランプ氏は一部関税の90日間停止を発表するなど、柔軟な対応も見せている。今後は、日本を含む同盟国との交渉や、品目別関税(半導体や医薬品など)の拡大が焦点となるだろう。 日本としては、閣僚間協議を通じて関税の軽減を目指しつつ、EUや東南アジアとの連携を強化し、自由貿易体制の維持に努める必要がある。トランプ関税は世界経済の不確実性を高めるが、その真意を理解し、戦略的な対応を講じることが求められている。 中国が日本産水産物輸入を一部再開:その政治的狙い 5月30日、日本政府は中国との間で、日本産水産物の輸入再開に関する技術的な要件で合意に達したと発表した。この合意は、2023年8月に東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出開始に伴い、中国が日本産水産物の輸入を全面停止して以来、約2年ぶりの進展となる。今後、輸出関連施設の再登録手続きが完了次第、日本産水産物の対中輸出が再開される見通しだ。この動きは、単なる経済的合理性を超えた中国の政治的戦略の一環として注目される。なぜこのタイミングで中国は輸入再開に踏み切ったのか。その背景には、国際政治の力学、特にトランプ政権の保護主義的姿勢と日米関係への影響を巧みに利用する狙いがある。 トランプ政権の保護主義と日米関係への影響 トランプ米大統領の再選後、米国は再び保護主義的な経済政策を加速させている。トランプ政権は「アメリカ・ファースト」を掲げ、諸外国に対する高関税政策、いわゆる「トランプ関税」を推進。これにより、欧州やアジアの同盟国を含む多くの国が経済的混乱に直面している。特に日本に対しては、自動車や工業製品に対する関税引き上げや、相互関税の導入をちらつかせ、日米間の経済的緊張が高まっている。トランプ氏は、日本の対米貿易黒字を問題視し、さらなる譲歩を求める姿勢を明確にしており、日米関係の経済的基盤に揺らぎが生じつつある。 こうした状況は、中国にとって対日接近の好機を提供する。中国は、米国との対立が続く中、日米同盟の結束を弱体化させることで、対中国抑止の枠組みを揺さぶりたいと考えている。日本産水産物の輸入再開は、経済的な恩恵を日本に与えることで、両国間の関係改善を演出し、日本を米国から引き離す一歩となり得る。中国はこれまでも、経済的インセンティブを外交カードとして活用してきた歴史があり、今回の動きもその延長線上にある。 中国の狙い 日米分断と地域的影響力の拡大 中国の狙いは、日米による対中抑止の枠組みを脆弱化させることにある。日米同盟は、アジア太平洋地域における中国の影響力拡大を牽制する要として機能してきた。しかし、トランプ政権の保護主義的圧力が日本に及ぶ中、中国は日本との関係強化を通じて、この同盟に亀裂を生じさせようとしている。輸入再開は、日本にとって経済的メリットが大きく、特に水産業界や地方経済への恩恵が期待される。これにより、一部で対中関係改善を求める声が高まることも考えられよう。 さらに、中国は東アジアにおける地域的影響力の拡大も視野に入れている。日本産水産物の輸入再開は、ASEAN諸国や韓国など、他のアジア諸国に対するメッセージにもなる。中国が日本との経済協力を深める姿勢を示すことで、地域内の対中包囲網を緩和し、経済的結びつきを強化する狙いがある。これは、米国が推進するインド太平洋戦略への対抗策としても機能する。 日本側の対応と今後の展望 日本政府は、今回の合意を経済外交の成果として歓迎する一方で、中国の政治的意図を慎重に見極める必要がある。輸入再開は日本の水産業界にとって朗報だが、過度な対中依存は、将来的な外交リスクを伴う。 繰り返しになるが、中国が日本産水産物の輸入を一部再開する背景には、トランプ政権の保護主義による日米間の亀裂を突き、日米同盟の結束を弱体化させる戦略がある。経済的インセンティブを通じて日本に接近し、地域での影響力を拡大する狙いは、中国の長期的な地政学的目標と一致する。日本としては、経済的利益を確保しつつ、中国の意図を冷静に分析していく必要がある。
2025.06.03
福島県のいわき信用組合(いわき市)で持ち上がった「架空融資問題」。5月30日に第三者委員会が調査報告書を公開したが、全243ページある中、「虚偽」という言葉が82回、「隠蔽」が104回という、中身的には真っ黒々というもので、SNSでは「半沢直樹の世界も真っ青」とネタにすらなっている。 不正融資は04年3月から昨年10月まで約20年、江尻次郎元会長ら幹部の主導によって行われたというだけあって、少なくとも1293件、総額247億7178万円が実行されたという。06年12月末時点の正規融資が約52億円だったというからその大規模ぶり分かるが、昨年秋の公表時点では「10億円超」ということだったので、その「隠蔽」体質の悪質さも伺える。 だから報告書での書かれっぷりもそうとうなもので、 「当組合の対応は、自ら積極的に事実関係を明らかにしようとするものとは真逆であり、意図して全体像を隠そうとしていると疑わざるを得ないおのである。」 などと、委員会も激をこだ。またその「隠蔽」ぶりを別に表すものとして、10編からなる調査報告書のうちの第3編は「調査中に発生又は発覚した調査遂行上の問題」とあり、つまりは調査の妨害や誤魔化しなのだが、これだけで38~56ページまでを要している。 さらにその中でも、一連の不祥事が発覚した24年10月末以後、不正を示すデータが入っているノートパソコンを持っているのが怖くなって自宅で「ハンマーにより破壊して処分」したといった件に至るや、SNSでは「気合が入っているな」と、これもやはりネタに。 また不正が明るみになるきっかけは、24年10月2日に「元信用組合職員」を名乗る投稿者が不正事案についての暴露を始めたため、というのもまた事実は小説より奇なりを地でいくサスペンスぶり。 一方で救いがないのが、12年の東日本大震災で同組合には公的資金175億円がつぎ込まれたことで、それで調子に乗って不正を続けた節が強いことだ。だがそれも退いて見れば、震災がもたらした1つの惨禍ということなのかもしれない。
2020年から世界的に蔓延し、猛威を奮ってきた新型コロナウイルス。徐々に感染者数も減っていき、感染症法上の扱いが季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行してから5月8日で2年が経過したが、いまだに新型コロナの「後遺症」に苦しむ人は多い。激しい倦怠感から通勤ができなくなった大人や不登校になってしまった子供たちも後を絶たず、深刻な影響が続いている。行政による支援の拡充は必須だ。 ▼WHO定義は「別病気では説明できない症状が2か月以上」 新型コロナ後遺症について、世界保健機関(WHO)は「感染から3か月時点で別の病気では説明できない症状があり、それが2か月以上続く」と定義している。ただ、分かりやすい明確な症状として定められていないこともあり、病院によって「新型コロナ後遺症」と判断するか否かの判断が割れているのが実情だ。このため、身体があまりにだるくて病院に行ったものの、原因不明と判断された患者が病院を転々とし、数件目に診てもらった病院でやっとこさ「新型コロナ後遺症」と診断されたケースも少なくない。 ▼中高生は「思春期特有問題」で片付けられがち 特に影響が甚大なのは、子供たちだ。新型コロナ後遺症については、先述の通り医師によって判断にばらつきが生じがちなこともあり、厚労省などがまとめた全国的な患者数のデータはない。だが、患者グループらによると、小中学生や高校生で、急に朝起きられなくなったり強い倦怠感に襲われたりと、コロナ後遺症の疑いのあるケースは少なくなく、半年~数年単位で学校に行けなくなるという子供もいるという。病院によっては「思春期特有の問題」として処理し、コロナ後遺症と判断されず、不登校期間が長期化するなど深刻な事態も起きている。 コロナ後遺症を適切に診断するため、医療体制の充実が不可欠ともいえる事態となっており、国は全国規模で後遺症の実態調査に乗り出すべきだろう。 後遺症が治らないまま、登校できなくなったり通勤できなくなったりする期間が長期化すれば、高額な治療費など経済面でも苦しむ恐れが高まってくる。 治療費の補助も含め、国や自治体が後遺症患者の支援策を拡充していく必要がある。新型コロナウイルスの猛威はまだまだ終わりそうにない。
官房機密費 香村 それと内閣官房長官の時に、官房機密費というものを扱うわけですね。それで今、石破内閣において、いわゆる商品券の配布問題を巡って、いろいろ政治と金の問題がスキャンダルになって、それはまだ尾を引いてるというわけですけど、当時、官房機密費なんかは、平沢さんは具体的に…… 平沢 官房長官室の金庫に、現金が入っていたと思います。私は金庫の中まで見ていませんので詳しくは分かりません。官房長官はその金庫を管理していました。金曜日の夕方になると官邸の参事官、当時は厚生労働省から来ていましたが、その人が全部チェックしていました。足らない時は補充していたと思います。そのお金の使い道は官房長官の判断です。例えば、政治家だけでなく役所の人に対しても、海外に重要な仕事で行く時などは相応の額を出していたと思います。現金は法務省の関係者にもマスコミ関係者にも出ていたことがあったと思います。後藤田さん自身もいい情報を掴んだり、いい結果を出したりするにはある程度の金が必要だ。国のプラスになる場合には金も必要だ、という考えだったと思います。 香村 最近は、官房機密費は年間12億3000万とか言われてますけど、当時はどんなもんでした? 平沢 私は額は知りません。 香村 後藤田さん自身は自分で配らなくて、平沢さんとか他の人に“持ってけ”とかいう形で―― 平沢 他の二人の秘書官は知りませんけども、少なくとも私には指示がありました。官房長官から「気をつけて持って行け、直接本人に渡せ」と言われて風呂敷包みを運んだことはあります。中味は知りませんが、あとで届いたか否かを電話で確認していましたから、大事なものだったと思います。 香村 役所の秘書官は全部で四人だったんじゃないですか? 平沢 いや、そのうちの一人は後藤田さんの政務秘書官です。後藤田さんの政務秘書官の他に役所の秘書官が三人いて、私はその中の一人です。ですから秘書官は合わせると四人になります。役人の秘書官三人のうち、当番の日は担当の秘書官が後藤田先生が行かれる全ての場所に同行します。三原山の噴火の時、あの時は、私しか官邸にいなかった。三原山が大爆発したということで、後藤田さんがまず言ったことは、「今日中に大島にいる人を全員島外に避難させろ」ということでした。役人はみんなぶつぶつ言ってたけども、後藤田さんから言われたら仕方がないとわかっている。その後藤田さんが最後に言ったのは「責任は全部俺が取る」。これを言うから、役人はみんな安心して一生懸命やったのです。 香村 その官房機密費っていうのは、衆議院議長にも渡すんですか。国対委員長に渡す時もあれば、野党政治家に渡したりとか―― 平沢 これはわかりません。私はそれがお金かどうかも、中を見てないのでわかりません。金庫にいくらあるかもわかりません。ともかく国会でもし資金が必要となれば金は党から出るのでないですか。使途はね、例えば昔の官邸はものすごく開けっぴろげで、官房長官の秘書官室にマスコミが平気で入ってきて、自分の机のように電話をかけまくったりしてました。だから、マスコミは官房長官や秘書官が今、何をしているか、おおむね分かっていたと思います。 香村 官房機密費の原資は、外務省からも流れてきているということですね。 平沢 そのお金はどこかから持ってこなきゃならないわけです。どこから持ってきたか、それは私にはわかりません。 香村 田中角栄なんかは自前の金で配ってたということですね。 平沢 田中元総理は、いっぱい持ってますからね。 香村 結構、裏金も作って――(つづく)
新教皇レオ14世戴冠、ああ、しかし、ここでも水を差すのか、ロシア&中国 (写真 新教皇レオ14世 カトリック中央協議会HPより) 米国人初のローマ教皇はレオ14世を名乗る。「レオ」と名の付く教皇というと西暦800年のレオ3世によるフランク王国カール大帝への戴冠で有名だ。このいわゆる「カールの戴冠」により、カールは神聖ローマ帝国の初代皇帝となる。キリスト教の理想を世俗の最大の権力者として委託された形で、その後の西欧世界に安定をもたらした。新教皇は移民問題などでトランプ米政権に批判的だが、一方で「西欧の現代文化が『福音と矛盾する信念を育んでいる』として、LGBTなど性的少数者の権利に慎重な発言をしたほか、ジェンダー教育推進にも反対したとされる」(時事通信報道)など保守的な側面もある。 新教皇は、2つの難問との対峙しなければならない。第一にロシア正教会の最高指導者モスクワ総主教のキリル1世と会見し、ウクライナの停戦および終戦の実現を説得できるかどうかだ。そんな中、ウクライナのゼレンスキー大統領は12日、教皇レオ14世と電話会談をした。また15日には、バチカンにウクライナ・ギリシャ・カトリック教会のキウイ大司教スビアトスラフ・シェフチュク氏を迎えている。そして2人はレオ14世との会見に感謝の意を表した。キリル1世はロシアのプーチン大統領のウクライナ戦争を「形而上学的な闘争」と位置づけ、ロシア側を「善」として退廃文化の欧米側を「悪」とし、「善の悪への戦い」と説いてきた。キリル1世は09年にモスクワ総主教に就任して以来、一貫してプーチン氏を支持してきた人物だ。 次に中国である。15日、世界のキリスト信者の迫害状況を発信してきた非政府機関、国際宣教団体「オープン・ドアーズ」は、ウィーンで報道向けのステートメントを発表し、「中国共産党政権が今月初めから中国での外国人の宗教活動をさらに厳しく取り締まる法を施行し、中国当局の宗教統制政策は、新たな次元に引き上げられた」と批判した。新法は「外国人の宗教活動に関する管理規則」と称し、具体的には、中国当局は外国人宣教師による説教、伝道、その他の宣教活動を禁止し、教会の礼拝に参加するにも政府の許可が必要と定めている。宗教を認めない共産主義政権下においては、中国のキリスト教徒は、国家公認の「愛国教会」に加入するように強いられている。中国では1958年以来、聖職者の叙階(聖職者任命)はローマ教皇ではなく、中国共産党政権と一体化した「中国天主教愛国会」が行い、国家がそれを承認してきた。これに対しバチカンは司教任命権を主張し、一方の「天主教愛国会」任命聖職者の公認を久しく拒否したが、18年9月、中国側の強い要請を受けて、愛国会出身の司教をバチカン側が追認する形で合意した。この合意は2年間の有効期限が設定されており、20年と22年に延長された。そして今回、両者はその有効期限を倍の4年間に延長することで合意した。なお、この合意の正確な内容はずっと非公開となっている。ところが中国当局は、フランシスコ教皇の崩御とレオ14世選出の間の空位期間に、上海市と新郷市で2人の新しいカトリック補佐司教を一方的に任命している。この動きは、司教任命に関する18年の合意に反する行為だ。 またバチカンは毛沢東が1951年、バチカンの最後の外交官を国外追放して以来、中国とは国交関係がない一方、台湾とは外交関係を維持している。フランシスコ教皇は昨年9月、中国側との対話について、「満足」としたが、欧米諸国ではバチカンの中国共産党政権への対応の甘さを指摘する声が小さくない。中国側の狙いはバチカンが台湾との国交を断絶し、中国共産党政権との国交を締結することだ。レオ14世は、ロシアと中国とどう向き合うのか注目される。
2025.05.25
トランプ大統領はなにがなんでも〝フェンタニル〟を撲滅させたいようだ (写真 米国麻薬取締局(DEA)紋章 Wikipediaより) 米国の薬物・麻薬の過剰摂取による死者数は、ガザ紛争の犠牲者の数や、ロシアとの戦争によるウクライナ側の犠牲者の数を上回っていると推察される。欧州はウクライナ戦争の停戦のために米国に積極的な関与を期待しているが、トランプ米大統領は「ウクライナ戦争は欧州の問題だ」と強調している。これはウクライナ問題に無関心だからではない。トランプ氏にとって米国内の薬物・麻薬戦争という「内戦」での勝利が何よりも第一だからだ。 米国疾病対策センター(CDC)によると、薬物の過剰摂取による死亡者数は昨年約27%減少し、10万人を下回って8万391人となり、2019年以来の最低水準を記録した。しかし、死亡者の半数以上は依然としてオピオイド(麻薬性鎮痛剤)に属する致死性の高い合成麻薬フェンタニルによるものだ。麻薬取締局は、23年の薬物過剰摂取による死亡者数約10万7000人のうち70%がフェンタニルなどの合成麻薬の乱用によるものであると発表したことがある。それほどフェンタニルは米国を蝕んでいるのだ。 トランプ米大統領は就任直後、「中国がメキシコ経由で米国に麻薬を大量に密輸しており、時にはコカインや他の物質が混ぜられている」と非難し、これが中国に120%の懲罰的関税を課した理由ともなっている。トランプ氏は就任3週目に、米国の最重要輸出国の3カ国メキシコ、カナダ、そして中国に関税を課した。メキシコとカナダに対しては、関税停止の見返りに、米国への麻薬密輸を阻止するために国境に1万人の兵士を派遣するなどの対策を約束させた。トルドー首相(当時)はまた、カナダがメキシコの麻薬カルテルをテロリスト・リストに載せ、米国と協力して「組織犯罪、フェンタニルの密売、マネーロンダリングと戦うための特別部隊を設置する」と発表した。 米国麻薬取締局(DEA)によると、中国は「米国に密輸されるフェンタニル関連化学物質(麻薬用前駆物質)の主な供給源」という。これらは通常、小包配送で米国に送られる。また財務省の報告書によるとフェンタニルの違法生産と流通により、密売人は24年に14億ドルの利益を得たと推定され、そのほとんどが米国の銀行を通じて流出したという。報告書は、フェンタニルの取引に関与している主なカルテルを、シナロア・カルテルとカルテル・ハリスコ・ヌエバ・ジェネラシオンと特定しているが、この2つの麻薬カルテルはメキシコでのフェンタニルのサプライチェーン(供給網)をほぼ支配しており、中国から調達した麻薬用前駆物質と製造装置を使用し、秘密実験室で製造されていると述べている。フェンタニルの取引には、フロント企業を使った化学製品ブローカー、マネーミュール(カネの運び屋)、米国を拠点とし、中国のサプライヤーからフェンタニルの麻薬用前駆物質を購入する仲介者が関与している。 ところで、関税率をめぐる米中の貿易交渉が5月10日から2日間スイスで開催された。米国からはベッセント財務長官とグレアUSTR代表。中国からは何立峰副首相が出席し、結果的にアメリカは関税率115%の「値引き」に応じた。そして日本のマスコミは報じていないが、フェンタニル問題も取り上げられ、中国の王小洪・公安相も会議に派遣されたとウォールストリートジャーナルは伝えている。
2025.05.25
いい加減にしてくれ!アメリカへの〝御みつぎ〟 それおれ達からしぼり取った〝税金〟だぜ!誰が出していいって言ったよ! (写真 ロックフェラーセンター) ドル基軸体制は日本が支えていることをトランプ米大統領は知らない。日本のフォローイングポリシーは、米国から「赤字を支えるために米国債を買え」「金利を据え置け」「為替レートを変えるから従え」と言われればすべてハイハイと頭を下げてきた。追随とは「隋」(中国の国家)に従うことであり、聖徳太子の遣隋使以後、中国の制度や文化をマネたという意味だから、現代日本語は「追随」を「追米」に変えるべきだ。アメリカから関税圧力を掛けられている今、日本の交渉は、世界最大の米国債保有国であることを武器に「売却するぞ」と脅せば良い。なぜ日本政府が唯々諾々と、いずれ紙屑になりそうな可能性をある物を抱えているかといえば、財務省にそういう大胆な発想をする御仁がいないからだ。米国が不動産不況に直面するや日本にロックフェラーセンターを買えと恐喝し、高値で買わされ、後日安値で買い戻された。 リーマンショックでは旧三菱銀行と野村證券が、リーマンなどへの出資救済を要請された。三菱銀は90億ドルの巨額を投じてモルガンスタンレーに出資し、野村證券はリーマンのアジア、欧州部門を2億5000万ドルで買収させられ、8000人の社員も引き受けた。この巨額支出の決定は米国からの1本の電話、わずか一晩で決定に至った。 ベトナム戦争では、米国が勝手に戦争をおっ始めながら、後始末は日本任せだった。カンボジアも「北爆」の巻き添えを食いナパーム弾や枯れ葉剤を撒かれたが、日本は同国の戦後復興を任され、地雷を撤去したのも日本だった。その後のカンボジア支援金額は日本がほとんどを担ったが、政治的にも経済的にもカンボジアから日本は駆逐され、完全に中国圏に支配されている。 湾岸戦争では尻ぬぐいの機雷掃海をやらされた。その日本に対して、米国が苦況に陥るとスーパー301条とか年次改革要求とかを突き付けられ、日本はアメリカのATM化し、米国債の最大の債権者である日本がアメリカ経済を支えてきた。ドル基軸体制は、日本が支えているといっても過言ではない。 アメリカがけしかけて始めたウクライナ戦争など日本は無関係なのに1兆7000万円の負担金が回ってきた。すべては重負担に喘ぐサラリーマンから財務省が毟り取ったカネからである。
2025.05.24
しつこいねえトランプ大統領、結局狙いはレアアース?、そういうこと? (写真 グリーンランドの地域の旗 Wikipediaより) 米トランプ大統領がまだ就任する前の2025年1月7日、長男ドナルド・トランプ・ジュニアが「トランプ号」でグリーンランドに着陸した。空港には歓迎するグリーンランド人(イヌイットエスキモー)ら現地の人々が集まった。ジュニア氏は「住民たちと話すための個人的な日帰り旅行」だとしたが、その後バーでトランプ支持の帽子をかぶったグリーンランド人のグループと一緒に撮った写真を投稿した。言うならば親父の露払いである。次いでトランプ氏が大統領に就任した後の3月28日、バンス副大統領夫妻がグリーンランドを訪問し、米軍が租借する宇宙軍基地に赴いて演説した。バンス副大統領は、「グリーンランド(デンマークの自治領)に対してのアメリカの投資はよい結果を生む。デンマークは安全保障を怠った。デンマークの傘下にいるより、(より軍事力の強い)米国の安全保障の傘下に入った方がずっと良い。グリーンランドはアメリカの安全の傘に入れば、安全保障の立て直しが可能である」と強調した。 ところがこの発言に異を唱えた基地司令官が解任されるという事件が起きた。そこまでしてトランプ氏は、グリーンランドを併合したいようだ。トランプ氏曰く、「我々はグリーンランドを手に入れる。軍事力なしでそれができる可能性は十分にある。グリーンランド併合は国際平和と国際安全保障と強さの問題である」と述べた。トランプ政権の主張は徹頭徹尾、安全保障問題である。つまり北極海航路をロシアと中国が抑えようとしていることは西側全体の脅威ではないか、と言って警鐘を鳴らし、北大西洋条約機構(NATO)などの中ロに対する鈍感さをズバリ批判しているのだ。こうしたトランプ氏の発言に対して、デンマーク国防相は、「このような言動は親しい同盟国としてふさわしくなく、緊張を高めるだけだ。トランプ大統領は行き過ぎだ」と非難した。 またグリーランド(首都ヌーク)のニールセン首相は「我々の招来は我々が決める」とし、トランプの申し出を拒否した。グリーンランドの議会選挙では、トランプの提案に反対する政党が多数派となり連立政権が誕生する。グリーンランド自治政府もトランプ氏に対して不快感を示した。だがトランプ氏のグリーンランド領有宣言は、パナマ運河奪還と1つのセットになっている。さらにはメキシコ湾の改称やカナダの合邦化、ペルシャ湾のアラビア湾改称もすべてトランプ流安全保障の発想から生まれている。グリーンランドの人口は5万7000人ほどで、広範な自治権を持っているが、その経済は主にデンマーク政府からの補助金に依存しており、デンマーク王国の一部であり続けている。 また、バッテリーやハイテク機器の製造に不可欠なレアアース(希土類)の埋蔵量は世界有数の規模を誇る。トランプ氏の狙いはそこか?!
2025.05.23
なにがなにやらわけがわからんゾ!ロシア(プーチン)と中国(習近平) (写真 キルギス南部ジャララバード州のタシュキチュ集落で行われた中国~キルギス~ウズベキスタン鉄道プロジェクトの起工式で、国旗の背後で打ち上げられた花火。大統領府提供(2024年12月27日撮影)。(c)KYRGYZ PRESIDENTIAL PRESS OFFICE/AFP ロシアのプーチン大統領が4月29日、「5月8日から3日間停戦する」と一方的に発表したのは、とにかく戦勝記念日だけは無事に開催したいという身勝手な理由からだ。5月9日にモスクワ・赤の広場で行われた対独戦勝80周年記念式典には、中国の習近平国家主席をはじめ26カ国の首脳が出席し、プーチン氏は面目を保った。その一方で、主賓である習主席の滞在中(7日から10日)異例ともいえる3回の首脳会談を行ったが、その結果はロシアの中国追随を色濃く表す内容に終わった。記念式典の成功に満足し「友人習近平」を見送った後の11日夜、プーチン氏は「前提条件なしで、イスタンブールで和平交渉を開催することを提案する」との声明を出した。ところが、中国の王毅共産党政治局員兼外相は、プーチン氏の大統領声明の半日前、習主席モスクワ訪問後の記者会見で「ロシアは前提条件なしで交渉に同意するだろう」と発表していた。つまりプーチン氏は周氏から「交渉しろ」と迫られたということだ。 ウクライナは、記念日を控えた6日夜、ドローンをモスクワ周辺を含むロシア南西部に飛来させ、モスクワでは一時、すべての空港が閉鎖されるなどの混乱が起きた。しかし、習氏ら外国首脳がモスクワに到着した7日以降は、モスクワを狙った攻撃は行われなかった。その理由は、ウクライナにとって外国首脳を危険にさらすことは自殺行為だからだ。米中対立の中でロシアの立ち位置に注目が集まるが、習氏の式典参加は、少なくとも中ロの関係にくさびを打ち込もうとするトランプ政権の試みが、現段階では成功していないことを示している。習氏が式典に参加した理由は、トランプ米大統領に対し、中国とロシアは永遠の友人であることを改めて示すためでだが、ただお友達と言っても平等ではない。現在両国関係は、中国が一方的に利益を得ている。欧米などからの経済制裁を受けるロシアから、中国は多くの資源を安値で輸入し大きな利益を得ているが、ロシアへの中国の直接投資はわずかだ。ロシアが「自らの勢力圏」とする中央アジアやカフカス地域への中国の浸食は激しい。建設中の中国-キルギスーウズベキスタン(CKU)鉄道は、北京から同地域への直接アクセスを可能にし、同地域のロシアの輸送網への依存度を大きく下げさせる。それでもウクライナ侵攻で国際的に孤立するロシアは中国にすり寄るしかない。3回を費やした首脳会談では、中国へ武器支援を要請したが、どうやら中国は拒否したらしい。 首脳会談後の共同会見で、両国は多くの声明を発表した。 「核保有国に対話を通じた問題解決の呼び掛け」「ウクライナ危機の持続的な解決には、その根本問題の除去が必要」「米国によるロシアと中国の『二重封じ込め』に対抗するため連携を強化する」などである。実に長い声明だが、空虚な言葉が並んだにすぎないものだった。
2025.05.23
おお怖い!ある手を使って戦うことをせずに台湾を手に入れようとしている (写真 アルフレッド・E・モントゴメリー(少将時代) Wikipediaより) 台湾のある安全保障担当補佐官は、日本人外交官にこう言ったことがあるそうだ。「日本は外交政策を考えなくて済むからいいね。あるのは米国追随だけだから」。痛いところを突かれた。日本は独自の外交を実践できないが、時折米国が方針を転換すると、途端にチャンスが訪れる。米ソが敵対関係から雪解けになるや日本はシベリア開発、樺太ガス開発でロシアと協同事業を推進した。イランとは原油輸入で密接な関係があったが、米国のイラン制裁によりイラン原油の輸入が困難になると、アラブの商人は日本の足下を見た。以後日本は高い原油を買わされ続けている。核武装はがんじがらめの監視体制、つまり核拡散防止条約という不条理によって事実上禁止されている。アメリカ人には復讐権という強迫観念があり、日本が核武装すると、かならず2発お見舞いされるという恐怖感があるから日本に核を持たせない。 ところが台湾は日本と同じく米国追随だが、日本のようにやわではない。マーク・モンゴメリー元米海軍少将(民主主義防衛財団=FDD上級研究員、サイバーセキュリティーと防衛政策の専門家)が最近あるニュースサイトに語ったところによると、「中国は台湾に軍事侵攻する必要はない。その代わりにサイバー攻撃、経済的圧力、情報戦を使って1発も銃弾を撃つことなく台湾を支配下に置くことができる」と語った。これまでも「台湾は海上封鎖で電力を失う」と警鐘を鳴らされてきた。中国が台湾を支配下に置こうとする場合、戦わずに勝つ方法を採る。それが以下に述べる方法だ。実は台湾は電力の約半分を液化天然ガス(LNG)に頼っており、備蓄は数日分しかない。中国が台湾の主要なLNG荷揚げ港近くでミサイル試射を装って海域の封鎖を宣言したり、外交圧力をかけて船の入港を停止したりすれば、台湾全土は1週間以内に電力を失う。電力を失えば、冷蔵庫の食料品は腐る。銀行などのインフラは機能しなくなる。病院の患者は、命に関わる重要な機械が停止して死ぬかもしれない。こうして日本と同じ島国は根底から壊滅するのだ。爆弾やミサイルではなく、サイバー攻撃と供給の停止圧力によって完全に破壊されるというシナリオだ。 中国はすでに米国のインフラをも標的にし始めている。ハッカー集団「ボルトタイフーン」による活動で中国はグアムやハワイの重要な米国のシステムにマルウエアを侵入させた。台湾は現在、世界のサプライチェーン(供給網)と半導体戦略の中心に位置している。台湾が経済的なマヒ状況に陥った場合、世界の最先端半導体チップの約90%の供給が止まる。台湾は日米だけでなく、欧州やアジアなどの国にとってもいまや重要な資産となっているのだ。幸い台湾は真剣に防衛に投資している。米国では、台湾問題がいかに重大かが認識され始めている。日本も台湾と同じ境遇に置かれている。中国の目標は戦って勝つことではない。全く戦わずに勝つことだ。日本も中国のサイバー経済戦争に対抗するために経済的、デジタル的、軍事的に抗戦態勢を整える必要がある。
2025.05.22












