社会•事件 アマゾンVS公正取引委員会「いたちごっこ」 立ち入り「3度目の正直」厳格処分必至
アマゾンVS公正取引委員会「いたちごっこ」 立ち入り「3度目の正直」厳格処分必至
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2024/12/02

  インターネット通販最大手「アマゾンジャパン」(東京都目黒区)と公正取引委員会のいたちごっこが続いている。市場経済の基本ルーツである独占禁止法を所管し、「市場の番人」とも称される公取委が11月26日、アマゾンジャパンが運営する通販サイトで出品者に販売価格の引き下げを強要したなどとして、独禁法違反(不公正な取引方法)容疑で同社への立ち入り検査に乗り出した。公取委は近年、「GAFA」と称される巨大IT企業への規制を強化しており、アマゾンへの独禁法違反容疑での立ち入りは今回で3度目だ。ただ、過去2度の調査はいずれも「課徴金納付命令」や再発防止策を求める「排除措置命令」といった厳格な行政処分には至らず、違反認定をできないまま実質的に公取委の「敗戦」に終わった。異例の3度目となった立ち入り検査の今後の行方に注目が集まる。

◆優越的地位の乱用か                                                                   

  まずは新たに今回浮上している独禁法違反容疑について整理する。関係者によると、アマゾン側は自社の通販サイトに出品する業者に対し、目立つ位置で商品を表示するため価格を引き下げさせたり、自社の有料の物流サービスの使用を強制したりした疑いが持たれている。アマゾン側は、ほかの大手の家電量販店などの通販サイトも確認して値段をチェックしていたとされ、要求に拒否した出品者には、アマゾン側が定める「お薦め商品」のコーナーから除外していたという。

 一連の出品者に対する「圧力」をかけたともいえる行為は、圧倒的な立場を利用して出品者の事業活動を不当に制限している疑いが強く、公取委は今回、独禁法が禁じる「優越的地位の乱用」や「拘束条件付き取引」にあたるとみて、立ち入り検査に踏み切った

◆1度目は「大甘対応」

 アマゾンジャパンを巡っては、2016年に自社サイトの出品者に対し、ライバル会社の通販サイトよりも価格や品揃えを同等か有利にするよう強要した疑いが浮上。公取委は初めてアマゾンへの立ち入り検査に着手したが、同社が優遇を求めた契約条項を撤廃したため、公取委は「自発的な措置で不当行為を解消した」として審査を打ち切った。

公取委による立ち入り検査は、いわゆる捜査機関による「強制捜査」とは異なるが、検査を拒めば罰せられるため、「間接強制」とも言われる重いものだ。立ち入り検査を受ければ新聞やテレビでも報じられ、対象企業にとってのダメージはとてつもなく大きい。公取委が立ち入り検査を実施しながら、行政処分をせずに審査を打ち切るのは極めて稀だ。 

独禁法が専門のベテラン弁護士は「アマゾンへの立ち入り検査はで市場経済の健全化に向けて期待したのに、結果は公取委の『大甘対応』で終了。業界内には相当な衝撃と落胆が広がった」と明かす。さらに、当時はGAFAの日本市場への進出が顕著で、世界的にも競争当局による規制が進んでいた時期。公取委もネット業界の「マンモス」を相手に大きな拳を振り上げただけに、「無罪放免」とした結論には公取委内部からも批判の声が噴出し、ある公取委幹部は「アマゾンの自主的に不当行為を解消した、という上辺だけの対応を鵜呑みにしてしまい、生ぬるい対応で終えてしまった感は否めない。最初に厳格な対応を取っていれば、その後のアマゾンへの牽制にもなったはずだった」と後悔を明かす。

◆2度目は「確約手続き」で違反認定なし

  アマゾンを巡る公取委の「敗戦」は一度だけではない。1度目の立ち入り検査で独禁法違反の認定を免れた同社は、その後も日本市場で勢力を伸ばしていったが、2018年3月にも新たな疑惑が判明した。

アマゾンジャパンが自ら仕入れて販売する事業を巡り、取引するメーカーに対して、利益目標を下回った際に取引価格の最大10%の「協力金」支払いを要求した疑いがあるとして、公取委が2度目の立ち入り検査に着手したのだ。公取委は、優越的な地位にある同社が、要求を断りにくいメーカーに不利益をもたらせたとみて、2年以上にわたり関係者のヒアリングなど調査を進めた。だが、この2度目のケースでも、公取委は違反認定にこぎつけることはできなかった。

公取委はメーカー側の不利益を考慮し、2度目の立ち入りでは厳しい行政処分に向けた検討を進めた。だが、アマゾン側が違反の疑いがある行為を自主的に改善し、取引先の損害分を返金するなどの計画を盛り込んだ「確約手続き」の認定を申請してきたため、公取委は申請を認め、違反の認定を回避させた。

確約手続きは、独禁法違反の恐れのある行為について、公取委と業者側の合意で解決する仕組みで、2018年12月に導入された一種の「行政処分」。公取委側にとっても、業者の「自主的な改善策を講じた」との姿勢を受け入れることで早期に調査を終えられるメリットがあるとして、近年は適用が広がっている。企業名は公表されるものの、排除措置命令といった従来の厳しい行政処分とは一線を画し、独禁法違反認定はされないため、運用に否定的な経済関係者も少なくない。公取委内部でも確約手続きを懸念する声は根強く、ある公取委関係者は「ごりごり企業とやり合った上で処分するわけでもなく、いわゆる『手打ち』のようなものなので、職員の調査能力の低下にもつながっている一面がある」と嘆く。

同じ企業に対して類似した被疑事実で2度の立ち入り検査に踏み切りながらも、1度目は異例の審査打ち切り、2度目も「確約手続き」を選択し、アマゾンへの独禁法違反認定の機会を見逃し続けたともいえる公取委。今回で「3度目の正直」になるのか。公取委の本気度が試されている。

 

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