連載•小説 素人「推し」ブームを拡大させた歌麿『当時三美人』
素人「推し」ブームを拡大させた歌麿『当時三美人』
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2025/10/13

歌麿の次なるヒット作品は翌1793(寛政5)年にリリースされた『当時三美人』である。浅草随
身門の脇にあった水茶屋・難波屋の娘・おきた、両国薬研堀の水茶屋の娘・高島おひさ、吉原
玉村屋の芸者・富本豊雛の3人を大首絵で描いている。
モデルはいずれも実在の人物だが、‶プロ″は豊雛1人だけ、後の2人はまったくの素人娘である

当時、「水茶屋百人一笑」と題した一枚摺りのかわら版が売れていた。お察しの通り百人一首
をもじったタイトルで、吉原の水茶屋の看板娘たち1人1人への想いを狂歌で表現した内容。正
確なリリースの日付は不明だが、これと相前後して世に出た『当時三美人』は、大変な評判を取
った。
ちょっと足を運べば会えそうな素人「推し」のブームは、メディアの成熟と不可分の関係にある
ようだ。雑誌や地上波テレビに女子大生が登場し、一般女性がしばしばウェブやSNSで一気に知
名度を上げるように、登場から30年近く経った錦絵を介して素人の美人が注目を浴びるのは必
然だったろう。そして、そこから引き起こされる現象もまた、現代とほぼ同じだった。(つづ
く)

(西川修一)

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