政治•経済 中国がウクライナや中東での紛争に沈黙を保つ理由
中国がウクライナや中東での紛争に沈黙を保つ理由
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2025/10/06

ロシアによるウクライナ侵攻や、ガザをはじめとする中東での紛争において、中国は目立った行動を示さず、表向き「中立」を強調しつつも実質的には沈黙を保っているように映る。この姿勢の背景には、中国特有の外交戦略と国益のバランス感覚がある。

第一に、中国は「内政不干渉」を外交の基本原則として掲げてきた。これは自国の新疆やチベット、香港、台湾といった「内政問題」への外国からの批判を封じるために不可欠な論理である。他国の紛争に強く介入することは、この一貫性を損ね、逆に自国への干渉を招く恐れがある。そのため、中国は表面的には「対話による解決」を唱えるにとどめ、実質的には明確な立場を示さない戦略を選択している。

第二に、米国との戦略的対立が背景にある。ウクライナ戦争では欧米諸国が一枚岩となってロシアを制裁しているが、中国はロシアと経済的関係を深めている。他方で、欧州諸国との経済関係も維持したいのが本音である。そのため、ロシア寄りの発言を公然と行えば欧州との摩擦を招き、逆に欧米に同調すればロシアとの関係が揺らぐ。沈黙はその間隙を縫う最適解であり、中国にとって利益の最大化を図るための「戦略的曖昧さ」と言える。

中東でも同様である。中国はサウジアラビアやイランといった地域大国と同時並行で関係を強化しており、2023年には両国の国交正常化を仲介した。だが、イスラエルとも半導体やインフラ分野で協力を進めており、どちらか一方に強く肩入れすることは、経済的利益を損なう可能性が高い。とりわけエネルギー資源の安定確保は中国の生命線であり、紛争が長期化しても「どちらの側にも立たない」という姿勢を維持することが得策となる。

第三に、中国は国際社会において「責任ある大国」としてのイメージを保とうとしている。強硬な発言や一方的な軍事支援は、国連安保理常任理事国としての立場を弱めかねない。習近平政権が重視するのは、自国を「平和的解決を重んじる仲裁者」と見せつつ、裏では自国の国益を着実に積み上げる二面性である。

結局のところ、中国の沈黙は弱さの表れではなく、むしろ計算された現実主義の帰結である。欧米のように理念や同盟関係を優先するのではなく、経済的利益と安全保障上の余地を確保することが最優先されている。ウクライナ戦争や中東紛争においても、中国は「沈黙による影響力保持」という独自の戦術を選んでいるのである。

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