2025/10/04
『ソーゾク』は、喜劇か、はたまた悲劇か。まあこれは観る人によって意見は分かれるところであろう。所詮他人事と思っている人は間違いなく喜劇としてこの映画を観るだろうし、相続問題に直面したところでこの映画を観る人にとっては自分の置かれている立場を考え併せ、〝これは悲劇としか言いようがない〟、と思うであろう。この映画は観る人によってなんとでもその印象は変わってくるに違いない。それがこの映画の特長ではないかと考える。観る人によってその評価、そして観方が違うのだ。そしてそれらすべてが正解なのである。融通無碍というか縦横無尽というか、そんな映画なのだ。懐が深い映画と言い換えてもいいかもしれない。
コメディかトラジディか、それはともかくこの映画の神髄はエキスパートもうならせるだけの徹底した根拠があるということに尽きる。根拠というのを法的裏付けと言い換えてもいい。これが全編にわたって横溢している。これがこの映画のレピュテーションを決定付ける。こんなことを書けばいかにも難解な小難しい映画のように感じるかもしれないが、全然そんなことはない。まずは、コメディかトラジディか、というところから入っていくのだから。観る者は自然と相続問題における法的しばりを実感していく。そう、相続問題というのは法律にがんじがらめになっているのだ。針の穴のような小さい部分まですべて法律というものが入り込んで関係者を縛りあげる。
監督で脚本も書いた藤村磨実也もその実態を描こうとしたのだ、と筆者はみた。それをこんなエンタメに仕上げたのにはさすがといわざるを得ない。
エンタメと法律、この二律背反のような存在の中心に立ったのが、松本明子演じる〝相続診断士〟である。松本はこの役でいい味を出している。終始苦笑いのようなあいまいな表情を浮かべ、時にはおいしい話をし、かと思えば、法律に則った冷酷な話をする。松本の一言一言で当事者たちは一喜一憂する。これがテンポよく続くのだ。実におもしろいんだなあ、これが。映画全編に横たわる相続問題に関わる法的根拠は専門家も頷かざるを得ない。これがあって『ソーゾク』は刹那的なエンタメで終わらない強い存在意義を持ってくる。
エグゼブティブプロデューサーの関顕嗣はいう。
「松本(明子)さんは、今、空き家問題にも取り組んでいるそうです。演技に説得力があるのは芸能活動の外でそのような社会問題にも積極的に取り組んでいるからかもしれません。いい演技を見せてくれました」。
もうひとり忘れてならないのは、特別出演の布施博である。布施がどんな役で登場するかは観てのお楽しみ。ヒントをいっておこう。布施の登場シーンは実は多くはないが、この映画の法的根拠というややこしいシロモノをけれんみのない達者な演技で体現してくれている。それを布施はまるで肩ひじ張らず語りかけるんだな、円熟の演技としか言いようがない。説得力あるんだ、これが。
「本当に他人事じゃない〝相続〟。いつこの問題が勃発するかだってわかりません。その時のためにこの映画を観ておいた方がいいですよ。この先、パート2、パート3の構想も温めています」(前出 関)。
『ソーゾク』公開は10月17日。今からでも遅くはない。今すぐあなたが手に持っているスマホから公開日の席を押さえた方がいい。いつやってくるかわからない相続問題に直面したときに、〝しまった、あの時『ソーゾク』を観ときゃよかった〟なんて後悔をしないために。(文責 廣田玉紀[ひろた たまき] 敬称略)
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