2025/09/30
さて、『ソーゾク』である。
前回にて筆者は試写会にて本作を観たとお伝えした。その際に、監督の藤村磨実也(ふじむら まみや)と主演の大塚寧々が舞台挨拶をした。これがまず出色だった。この舞台挨拶、実は撮影禁止だったのだが、その理由がすこぶる粋だった。大塚はあえてスッピンで舞台挨拶に臨むから撮影禁止にする、というのだ。〝どーして?〟といぶかしく思ったが、その理由は映画を観てわかった。映画を観るとわかるのだが大塚は映画の中でもほぼスッピンのように見える。そういう役なのだ。どこにでもいるオバサン(失礼!)という役柄なのである。その役柄をまあ実にうまく、またのびのびと演じている。というよりも演じているようには見えずなんといえばいいのかそれは大塚の素としか見えないのだ。この大塚の演技がまことにいい。どこにでもいるオバサンを実に生き生きと演じている。そこにはなんの衒い(てらい)もブレもない。大塚の出演作品をすべて見ているわけじゃないが、この演技は彼女のキャリアの中でもナンバーワン、ツーになるものじゃないか、と勝手に思ってみたりする。こんなにうまい役者さんだったんだ、と目を瞠る(みはる)思いがした。そしてやっと気づかされた。〝ああそうか、だから大塚はあえて舞台挨拶でもスッピンだったんだ〟、と。映画を観て妙に納得させられた。それだけに大塚のこの映画に対する意気込みというか思い入れを感じた。そこに気づいて思わず〝やるね〟と唸った。
そこには役者のプライドがあった。舞台挨拶で大塚は映画の中のある場面のことを楽しそうに話していた。妹役の有森也実とのやりとりのことだった。それは思わず笑ってしなうようなコミカルな内容なのだが、これから映画を観る読者に対してはそのことは伏せておこう。
そんな大塚の演技を観るだけでもこの映画を観る価値はある。
エグゼグティブプロデューサーの関顕嗣はいう。
「大塚さん、この映画に対する思い入れはそりゃ強いものがありましたよ。こちらが気圧されるくらいでした」。
なるほど、やっぱりね。(敬称略 つづく)。
TIMES
連載•小説








