社会•事件 妊婦事故死 「胎児も被害者」訴えは届くのか 検察は徹底的に捜査を尽くせ
妊婦事故死 「胎児も被害者」訴えは届くのか 検察は徹底的に捜査を尽くせ
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2025/09/24

胎児を母体の一部として「人」とみなさない刑法の運用を巡り、遺族による悲痛な問題提起とい
えるのではないだろうか。愛知県一宮市の市道で5月、妊娠9か月の研谷(とぎたに)沙也香さん
(31)が車にはねられ死亡し、事故後に生まれた女児が意識不明となっている事故を巡り、遺族が
、脳に重い障害を負って意識不明の状態が続いている女児も被害者だと訴えている。重い障害を
負いながら懸命に生きる女児が、事故の被害者と扱われないことに遺族が納得できないのは当然
だ。

■署名11万超
起訴状などによると、事故は5月21日午後に発生。自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運
転致死)に問われた一宮市の無職児野(ちごの)尚子被告(50)は、歩いていた研谷さんを運転す
る車で後ろからはね、死亡させたとされる。
事故後に長女の日七未ちゃんが帝王切開で産まれたが、検察による起訴事実は、母親の研谷
さん1人に対するものだったため、遺族は、娘の日七未ちゃんに対する過失運転致傷罪も問うよう
求めている。オンラインで署名も募っており、すでに集まった約11万2000筆の署名が名古屋地検
一宮支部に提出された。検察側は、日七未ちゃんの怪我の状況などに関する補充捜査を進める
方針を裁判で明らかにしており、遺族の悲痛な思いが検察に届いたといえるだろう。
とはいえ、刑法が胎児を母体に一部として、「人」とみなしていない現状を踏まえると、遺族の訴
えがすぐに現実化するかは、簡単には見通せないのも事実だ。

■過去には胎児だった女児のけがで罪認めたケースも
一方で過去には、 胎児の時点で受けた傷害が出生後も影響したとして、加害者が有罪となっ
た交通事故もある。鹿児島地裁は2003年、交通事故が起きた当時は胎児だった女児のけがにつ
いて、業務上過失傷害罪が成立すると判断したのだ。類似の司法判断が広く定着しているわけで
はないが、捜査機関や裁判所には、是非ともこうした判例も重視し、遺族に寄り添った対応に期待
したい。
今回は、何の罪もない徒歩の研谷さんが車によって命を奪われ、その後産まれた日七未ちゃん
も意識不明になるという、極めて結果が重い事故だ。
遺族の切実な思いにどこまで応えられるのか、検察や警察の本気度が試されている。今後、女
児の被害についても被告の刑事責任を問えるよう、徹底的に捜査を尽くすべきだろう。

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