2025/09/05
2025年8月21日に横浜で開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)において日本の
地方自治体とアフリカ諸国とのつながりを強化し、人的交流と地方創生を同時に推進する
構想がアフリカホームタウン構想として発表された。認定された自治体は、愛媛県今治市
とモザンビーク、千葉県木更津市とナイジェリア、新潟県三条市とガーナ、山形県長井市
とタンザニアの4自治体。この構想の発表に伴いメディアやSNSで「対象自治体にアフリ
カから移民が押し寄せる」との懸念が拡散し騒ぎになっている。SNS上でそのような懸念
が拡散した背景にはナイジェリア政府の誤解による。ナイジェリア政府の発表には日本政
府が特別な就労ビザを用意するという内容が含まれていた。しかし、このことはナイジェ
リア政府の希望的観測に過ぎず実際には日本政府にそのような想定はない。日本政府はナ
イジェリア政府の発表を否定すると共に移民受け入れ促進や特別査証の発給を行うことは
ないことを明らかにしている。タンザニアも凡そナイジェリアと同様の認識にあったよう
であるが日本政府の反応を受けてプレスリリースを訂正している。
ナイジェリアやタンザニアの政府を含めた現地メディアの発表を受けてSNS上で「移民
で溢れるのでは」「日本が乗っ取られるのか?」などの声が急増、木更津、新潟三条、長
井、今治の自治体窓口には、誤報への不安から電話やメールでの苦情が数千件単位で殺到
、国民の不安と批判は高まった。一部の論調においては排外主義的な分断を生むに至って
いる。
ではなぜ日本政府とナイジェリア政府やタンザニア政府との認識の誤差が生まれたのか
。それは偏に翻訳リスクにあると考えられる。Designate=指定する、をdedicate=捧げる
、に混同したことから日本の移民国家化が推進されると解釈されたのだろう。たったこれ
だけのことならば外務省が直ちに訂正すれば大きな騒ぎにならなかったはずだ。ところが
JICAから十分は情報がもたらされていなかったことから外務省の訂正は後手に回った。も
し翻訳に齟齬がなければアフリカ諸国と日本の自治体との交流の推進を図るプロジェクト
に過ぎなかったのではないか。
誤解とはいえ、これだけ大きな国民の批判を受ける状況になった以上は、アフリカホー
ムタウン構想は一旦中止するべきである。無理に推し進めると国民の分断も進みかねない
。政府はSNSのせいだと責任転嫁することで世論を収めようとするのはあまりに短絡的に
過ぎる。(坂本雅彦)
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