椎野礼仁のTANKA de 爺さん 第22回 家無き男たち 高田馬場編
連載•小説
2025/09/01
家無き男 高田馬場編
あの男も高田馬場は長いなあ 鉄腕アトムの壁にもたれて
朝は壁、昼はガードに陽を追って。眠りこけてる? 哲学してる?
おお髪を切ったなあいつ、おっ髭は剃らずにそのまま おしゃれでしたか
東京は午後から雪の予報だぞ それを知るすべ持っているのか
あの男こちらの顔を覚えたかチラ見してるとよく目が合った
貴種流離の果てかと思い巡らせば たちまち砕けるそのだみ声だ
高田馬場には常連のホームレスがいた。たまに二人になることもあったが、シマの掟があるのか、すぐ、その男一人になる。日の当たる場所を選んで、壁やガードレールに日がな一日、持たれている。本でも読まないで退屈じゃないのかと思うが、見たことはない。
歩くときは、右手に潰れた空き缶が詰め込まれたビニール袋。左手には、煮しめたような真っ黒な毛布を、いつも抱えていた。
それが、ここ1年程前、ぷっつりと姿が見えなくなった。河岸を買えたのか、行政の追い立てを食らったのか、あるいは・・・
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