連載•小説 好評連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』vol.34 『中村南スポーツ交流センター その4』
好評連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』vol.34 『中村南スポーツ交流センター その4』
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2025/08/03

 俺は平泳ぎをしている。中学生以来、実に32年ぶりに25mプールを泳いでいる。

最初は自信がなかったが、手足を動かせば自然、前へ進んで行く。

一体、この泳ぎ方を誰に教わったのだ?体育の牧浦先生か?あの頃が昨日の続きのように俺は泳いでいる。これほど長い間、25mプールの筋肉を使わなくてもここまで動くとは、もしや俺の前世は魚だったのか?

ブクブク。ハー。ブクブク。ハー。と思ったが、息継ぎのスパンが短すぎる。これだけ頻繁にハー。空気が必要ならハー。魚の線はあっさり消えたハー。前世はなんなのだ?忍者か?でも忍者だったら泳ぐよりもハー。水面を歩けそうだハー。しかしなぜ俺はこんなにも前世にこだわっているのだハー。

余計なことを考えたらブクブク。沈みはじめて来た。目に水が入って前が見えない。あとどれ位でゴールだろうか。俺は忍者でも魚でもないブクブク。

顔を上げた刹那、はるか向こうにいる監視員が蜃気楼のように見えた。

(つづく)

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