定信「寛政の改革」を暗におちょくり、批判して大人気に
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2025/07/31
松平定信「寛政の改革」が始まった当初、江戸市中ではこんな狂歌が流行った。
世の中に蚊ほどうるさきものはなし
ぶんぶといひて夜もねられず
定信が奨励した「文武両道」がよほどしつこかったと見えるが、武士階級も町人も「文武、文武とうるせえよ定信」が本音だったのだろう。
この狂歌と同様、爆発的に売れた蔦重・耕書堂の黄表紙は、同じ軽い読みものであっても、内容はそれまでのものとは異なり、幕政をおちょくったり、暗に批判する内容だった。
例えば朋誠堂喜三二の『文武二道万石通』は、鎌倉時代の設定で幕府の御家人・畠山重忠が若き源頼朝の命を受け、諸国の武士たちを「文」と「武」と「のらくら」の3つに振り分ける、というストーリー。頼朝は11代将軍・家斉、重忠は定信のパロディである。
結局、文も武もダメな「のらくら」武士が一番多かったというオチなのだが、挿絵に描かれた裃の家紋から、「のらくら」武士たちとは定信らに粛清された田沼派の面々を暗示していた。正月に売り出された同書は、7日目には売り切れたという。
『鸚鵡返文武二道』は平安時代の京の都が舞台。定信をモデルにした人物が武芸を奨励するのだが、人々は武勇を競って洛中で大騒ぎするようになった。それならば、と有名な儒学者が人々に孔子孟子の道を説くのだが、人々はその内容を誤解してやはり洛中で大騒ぎを引き起こすのだった。(つづく)
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