社会•事件 冤罪の救済阻む再審制度の改革が急務 福井中3殺害 再審無罪
冤罪の救済阻む再審制度の改革が急務 福井中3殺害 再審無罪
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2025/07/25

 再審で冤罪が晴れたところで、失われた長き人生を取り戻すことはできない。1986
年に福井市で起きた女子中学3年生殺害事件で、逮捕・起訴された逮捕時21歳の元被告
・前川彰司さん(60)の汚名がやっとすすがれた。殺人罪で懲役7年が確定し、服役し
た前川さんの再審公判で、名古屋高裁金沢支部が7月18日、1審・福井地裁の無罪判決
を支持して検察側の控訴を棄却し、「再審無罪」とする判決を言い渡した。長期にわたり
司法判断に翻弄されてきた前川さんに対する国による補償や謝罪は当然だが、長すぎる再
審の制度改革も急務となっている。
■物的証拠なし 関係者証言頼み
事件を巡り、前川さんは1987年に逮捕されたが、一貫して無罪を主張。物的証拠も
乏しい中、福井地裁は無罪とした一方で、2審・名古屋高裁金沢支部が「事件後に血のつ
いた前川さんを目撃した」とする知人6人の証言を根拠に逆転有罪とし、最高裁で確定し
ていた。
 今回の再審無罪を決めた名古屋高裁金沢支部の判決は、有罪の決め手となった6人の証
言の信用性を否定。警察が「不利益な利益供与」によって関係者の供述を誘導し、検察が
故意に証拠を開示しなかったことを認めた上で、「刑事司法全体に対する信頼を揺るがし
かねない」と断じた。ここまで捜査機関の「不正」を裁判所が認定するのは異例のことで
あり、警察や検察は猛省すべきだろう。
■証拠の迅速化開示が不可欠
 前川さんが長年にわたり司法判断に翻弄されてきた背景にあるのは、再審の証拠開示に
法的義務がないといった再審制度の「欠陥」だ。名古屋高裁は2011年にいったんは再
審開始を決めたが、検察の異議申し立てを受けて取り消した。2度目の再審請求が昨年に
認められ、今回の無罪につながった。
 今回の事件では、有罪立証の柱となった目撃証言の矛盾を示す重要な証拠があったのに
、検察が開示したのは2度目の再審請求中のことだった。刑事事件の捜査は、国民の税金
を原資に行われており、検察が証拠を独占する現行法の不備を露呈したともいえそうだ。
 1966年の静岡県一家殺害事件で死刑が確定後、再審無罪となった袴田巌さんのケー
スでも、検察はなかなか証拠を開示せず、無罪に結びつく証拠開示までは最初の再審請求
から約30年も要した。
 冤罪で長年にわたり苦しめられた袴田さんらの事件を踏まえ、再審制度改革に向けた議
論が法制審議会(法務大臣の諮問機関)で進んでいる。だが、論点は多岐にわたり、取り
まとめには時間がかかるとみられている。
 ただ、冤罪は誤って罪に問われた人の人生を狂わせるだけではなく、真犯人を長年にわ
たり見過ごしたことにもなり、社会にとっても不利益は小さくない。
 国はできるだけ早く再審制度を改め、迅速な審理を可能とする仕組みを構築すべきだ。

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