2025/07/19
2025年7月13日、共同通信などが報じたところによると、米国防総省高官が英紙のインタビュ
ーで、台湾有事における日本の積極的な関与を求めた。この発言は、米国のアジア太平洋戦略に
おける日本の役割の重要性を浮き彫りにし、同時にその背後にある米国の本音と複雑な意図を推
察させる。
台湾海峡を巡る緊張は近年高まっており、中国の軍事的圧力が増す中で、米国は同盟国との連
携強化を急いでいる。米国は、中国の台湾への潜在的な侵攻を抑止するため、日本を含む地域の
同盟国との協力を不可欠とみなしている。特に日本は、地理的に台湾に近く、米軍の主要な基地
を擁する戦略的要衝である。米国防総省高官の発言は、こうした地政学的現実を反映したものだ
。
米国は、台湾関係法に基づき、台湾の防衛を間接的に支援する立場を維持しているが、直接的
な軍事介入には慎重な姿勢を示してきた。いわゆる「戦略的曖昧さ」政策は、米国の介入の不確
実性を保つことで中国を牽制する一方、具体的な軍事行動のコミットメントを避けるものだ。し
かし、近年では中国の軍事力増強や台湾周辺での挑発行為が顕著になり、米国は同盟国との共同
対応の枠組みを強化する必要に迫られている。
米国の高官が日本に求める「関与」とは、具体的にどのようなものか。まず考えられるのは、
軍事的な協力だ。日本は自衛隊の能力を近年強化しており、米軍との共同訓練や情報共有も進ん
でいる。台湾有事では、日本の基地が米軍の後方支援拠点として機能する可能性が高い。さらに
、自衛隊がミサイル防衛や海上警備で役割を果たすことも想定される。また、経済的・外交的な
関与も重要だ。日本は、中国に対する経済制裁や国際的な非難の枠組みに参加する可能性がある
。さらに、台湾への人道支援や避難民対応など、非軍事的な面でも日本の協力が期待されている
。これらは、米国が単独で負担するには重すぎる責任を同盟国と分担したいという意図の表れだ
。
米国の本音を考える上で鍵となるのは、負担の分担だ。米国はグローバルな軍事プレゼンスを
維持する一方で、国内では財政的・政治的な制約に直面している。台湾有事のような大規模な紛
争は、米国の資源を大きく消耗する可能性があり、その負担を同盟国に分散させたいというのが
本音の一端である。特に日本は、経済力、技術力、地理的優位性を備えた同盟国として、米国に
とって不可欠なパートナーであることは言うまでもない。
さらに、米国は日本を「インド太平洋戦略」の要として位置づけている。中国の台頭に対抗す
るため、米国は日本、豪州、インドなどとの「クアッド」枠組みを強化し、地域の安全保障ネッ
トワークを構築している。台湾有事での日本の関与は、この戦略を具現化する試金石ともいえる
。米国は、日本が単なる米軍の支援基地ではなく、積極的なプレイヤーとして地域の安定に貢献
することを期待している。
しかし、米国の要求には曖昧さが伴う。米国自身が台湾有事への対応方針を明確にしていない
にもかかわらず、日本に具体的な役割を求めるのは矛盾をはらむ。米国の「戦略的曖昧さ」は、
同盟国に明確なガイドラインを提供しないまま、協力の必要性を強調する。この点は、日本にと
って対応の難しさを生む。
日本は憲法9条の制約や、国民の反戦感情を背景に、軍事的な関与に慎重な姿勢を崩していない
。米国が求める「最前線に立つ」役割は、憲法違反との批判を招く可能性もあり、国内の政治的
議論を複雑化させる。また、中国との経済的結びつきが強い日本にとって、米国の要求に応じる
ことは経済的リスクも伴う。米国はこうした日本の国内事情を理解しつつも、戦略的パートナー
としての日本の積極性を求めている。
米国の本音には、中国への牽制という意図も強く働いている。日本が台湾有事で積極的に関与
すれば、中国に対する抑止力が高まる。逆に、日本が消極的な姿勢を示せば、同盟の結束が揺ら
ぎ、中国に付け入る隙を与える。今回の米政府高官の発言は、日本に「同盟の責任」を意識させ
、行動を促すための圧力とも解釈できる。そして、同時に米国は日本を試している可能性もある
。日本の安全保障政策の進化、特に「反撃能力」の保有や防衛費増額は、米国にとって歓迎すべ
き動きだが、実際の有事での日本の対応は未知数だ。米国の高官による発言は、日本政府に具体
的な準備を迫り、その本気度を測る意図も含まれているだろう。
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