2025/06/20
スパイ小説家の裏家業はスパイだった。サスペンス小説「ジャッカルの日」(角川書店:篠原慎訳)など数々の世界的ベストセラーを世に送り出した英国の作家、フレデリック・フォーサイスが亡くなった。享年86歳。スパイ小説を中心に25冊以上の本を書き、世界で7500万冊を売り上げた。
著作は「ジャッカルの日」以外に「オデッサ・ファイル」「シェパード」「悪魔の選択」「第四の核」「ネゴシエイター」「神の拳」「アヴェンジャー」「コブラ」だが、国際政治に参考となるのは「悪魔の選択」「第四の核」で、その情報源は、英秘密情報部(MI6)だとされる。評価が最も高く、エンタメとしても迫力があるのは「ジャッカルの日」だろう。
フォーサイスの経歴は輝かしい。英空軍の戦闘機パイロット、BBCやロイター通信記者からフリージャーナリストを経て、第1作「ジャッカルの日」を発表。それまでの取材経験が作品に迫真性を与える上で大きな役割を果たしたようだ。
しかし驚くのはまだ早い。2015年に英紙サンデー・タイムズのインタビューで、20年以上、MI6の協力者だったことを明らかにしたのだ。ナイジェリアの東部州が分離・独立を宣言した「ビアフラ戦争」を取材中の1968年にMI6と初めての接触があったという。実際にクーデター未遂事件にも関与したという説もある。
世界的な人気作家が諜報活動に関わっていたことに驚くが、英国では作家がスパイだった例は少なくない。
サマセット・モーム、グレアム・グリーン、そして「007シリーズ」のイアン・フレミングらも諜報員だった。英作家アンソニー・マスターズは、「スパイだったスパイ小説家たち」(新潮選書:永井淳訳)でそう記している。もっとも007は徹底的に娯楽であるゆえフォーサイスとは分野が異なるのではないか。事実は小説より奇なりと言う。
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