大好評連載 椎野礼仁の『TANKA de 爺さん』 第7回
連載•小説
2025/05/12
母 その3
「パパにはね内緒ですよ」といくばくの金を渡してくれた母親
「アニキこれ」千円札が目の前に 高校生じゃ大金だろう
いつ帰るかわからぬ息子の姿もとめ、いつも窓から見つめていたと
一歩半下がって夫の影ふまず 大正生まれの女の一生
学生運動をやっていると、困るのはゲルピン。ゲル(カネのドイツ語)がピンチ。学生運動に反対している父親だと、月々の仕送りが止められてしまう。みんなそれぞれバイト先を見つけていた。
僕の場合は、ビルの工事現場のダクト業者の下請けをやっている一人親方のところで、肉体労働をやっていた。「ハスリ」「墨だし」「コンクリートを練り」「片付け」etc.etc. ザツコウ(雑工)と呼ばれていた。
友人やシンパ(運動はやらないが趣旨には賛成の人。シンパサイザーの略)のカンパも大きかったが、たまに家に帰ると、上の歌のようなことも、時々あった。
母親は大正12年生まれ。90歳超まで生きた。
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