政治•経済 「国際平和維持軍」か「欧州平和維持軍」か、キーマンはトランプ米大統領
「国際平和維持軍」か「欧州平和維持軍」か、キーマンはトランプ米大統領
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2025/03/31

欧州のプライドはどこにいった?アメリカなしには国際平和維持軍はあり得ないとは?これ如何に。

(写真 トライデントミサイル Wikipediaより)

 米国抜きでは「国際平和維持軍」は不成立に終わる。3月11日、仏・パリで仏・英両国政府によるウクライナ支援に関する軍参謀総長等会議が開かれた。ウクライナ侵略戦停戦後のロシアとウクライナ両国の紛争境界線に派遣する「国際平和維持軍」の派遣問題について、NATO加盟32カ国のほとんどが参加し話し合いが行われた。顔ぶれは各国参謀総長または代表者が出席しており、当事者のウクライナは安全保障・防衛会議のメンバーでもある国防当局者が代表として参加した。NATO加盟国中、クロアチアとモンテネグロは招待に応じず、米国は招待されなかった。「国際」の名は落ち、「欧州平和維持軍」として停戦が成立した後にロシアが再びウクライナを攻撃するのを防ぐ役割を担う。すでに米政府はこの構想に慎重な姿勢を示しており、ロシアは強く反対しているのは言うまでもない。それでもウクライナへの「欧州平和維持軍」の派遣を早くから提唱してきた仏・マクロン大統領や英・スターマー首相のイニシアチブが一応陽の目を見た。

 問題は欧州の盟主ドイツだ。独は2月23日の総選挙後とあって態度保留だが、ショルツ独首相は2月中旬の時点で、ウクライナに独軍を派遣する議論について「極めて不適切だ。完全に時期尚早だ」との見解を示している。欧州平和維持軍の派遣のためには、ロシア軍とウクライナ軍の戦争が一時停戦することが前提となるから、具体化するまでにはまだ紆余曲折がある。ウクライナのゼレンスキー大統領は停戦の第1段階として空と海での戦闘中止を提案しているが、ロシアはウクライナの停戦案について全く関心を示していない。

 もう一つの問題は対ロシア抑止力としての「核」だ。欧州における核保有国は英・仏の2国だけで、独やイタリア、ベルギーなどには米軍の核兵器が保管され、北大西洋条約機構(NATO)加盟国への核抑止力の役割を果たしている。だが、もしトランプ米大統領が欧州からその核兵器を撤去した場合、欧州の安全保障はどうなるのかという大問題が横たわっている。マクロン大統領はいち早く「米軍の欧州撤去」というシナリオを考え、欧州独自の核の抑止論の議論を呼び掛けてきたが、マクロン氏自身は、欧州独自の核抑止という問題では慎重な姿勢を崩していない。その理由は、同じ核保有国といっても、英・仏ではその運用が大きく異なっているからだ。英国は核技術で米国に依存しているが、フランスは核ミサイルから弾頭まで独自に製造、設計している。またフランスは海洋核戦力と空中核戦力を有するが、英国の場合、空中核戦力は保持していない。1958年の米英相互防衛協定により、英国は米国の核技術へのアクセスを許され、米国製の兵器を使うことが可能となった。1962年のナッソー協定で、英国は米国製のポラリス・ミサイルを購入し、以後SLBM型の核抑止力へ一本化した。その結果、英国の核抑止力は、すべて海上発射型のトライデントⅡD5弾道ミサイル(SLBM)に依存している。 ヴァンガード級原子力潜水艦(4隻)がこれを運用し、最低1隻が常に哨戒に当たっている。このトライデントミサイルは米・ロッキード・マーチン製であり、定期的なメンテナンスやアップグレードも米国の協力のもと行われる。そのため、米国の技術支援が停止した場合、英国の核戦力維持に支障が出る可能性がある。フランスの海洋核戦力は、ル・トリオンファン級原子力潜水艦(4隻)がM51SLBMを搭載しているが、オールフランスの独自開発だ。空中核戦力では、ラファール戦闘機に搭載可能なASMPA巡航ミサイルを運用して核攻撃能力を持つ。すべてフランス国内で開発・製造・運用されており、米国の支援なしに完全な運用が可能だ。したがって現時点で欧州独自の核抑止力を完全に自立した形で運用できるのはフランスのみで、そのレベルは、米ロには及ばないものの中国の核戦力と同等かそれ以上の能力を持つ。とはいえ「欧州平和維持軍」の総合力は、米軍事力がどうかかわるかがキーポイントになるのは間違いない。

 

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