2025/03/22
ムソルグスキーと東郷平八郎の奇妙な共通点 名曲「キエフの大門」と「日本海海戦」
(写真 上:ムソルグスキー、下:東郷平八郎)
ロシアによるウクライナ侵攻がいまだに続くなか、ロシアの作曲家ムソルグスキー(1839~81年)の組曲「展覧会の絵」(作曲1874年)を構成する曲の1つである「キエフの大門」が注目されている。攻撃を受けるウクライナの首都の名が刻まれた楽曲には、ムソルグスキーが、前年に亡くなった友人で建築家のガルトマンが残したスケッチや水彩画などの遺作展に触発されて書き上げたといわれている。
この名作は、前奏や間奏の役割を果たす「プロムナード」と「古城」など10の標題を持つ曲で構成されるピアノ組曲だが、バレエ曲「ボレロ」などで知られる作曲家、ラベルのオーケストラ編曲でも有名である。その「展覧会の絵」が2025年3月9日のNHKのEテレで、N響第2026回定期公演(2024年12月5日サントリーホール)の収録画像として放送された。この録画放送は「ラベル版」で流されている。放送中の「キエフの大門」は「キーウの大門」と“改定”されていた。日本政府が、≪軍事侵攻している側のロシア語に基づき適切ではないという指摘があることも踏まえ、今後、各省庁が作成する資料などでは、ウクライナ語に沿った「キーウ」に改める≫と発表しており、NHKや読売新聞などは「キーウ」と表記しているから当然であろう。ただしこの放送はニュース番組ではない。この場合、現代に不適切な表現があったとしても「原作のオリジナリティーを尊重し…」というクレジットを入れるのが常だ。
ムソルグスキーはウクライナ人ではない。ウクライナを小ロシア、ベラルーシを白ロシアと呼称していた帝政ロシアの人だ。しかもロシア民謡の伝統に忠実な姿勢をとり、ロシアの史実や現実生活を題材とした歌劇や諷刺歌曲を書いている。この作風を尊重すれば「キエフの大門」としたうえで、「オリジナリティーを尊重して」のクレジットを入れるべきだったのではないか。

ところでその同じNHKで、司馬遼太郎の代表作の1つ「坂の上の雲」が再放送されていた。最終章は「日本海海戦」。この海戦で日本の連合艦隊の被害は水雷艇3隻だったのに対し、当時世界最強と謳われた帝政ロシアのバルチック艦隊はほぼ全滅した。英国の記者は、この歴史的大勝に、「白人1強の時代は終わった」とまで述べたが、日露戦争の部分だけでも在日ウクライナ難民の人に向けてウクライナ語で放送できなかったか。日本の若者は海外では広く知られる連合艦隊司令長官・東郷平八郎を知らない。日本の歴史教科書は、李氏朝鮮時代、朝鮮に侵攻した豊臣秀吉の水軍を破った「李舜臣」将軍に1ページを割くが、東郷平八郎はページ欄外に1行その名が出てくるだけだそうだ。日本的解釈では、世界的大提督である東郷も単なる「戦争屋」に過ぎないからだろう。
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