2025/03/11
金融機関の職員による貸金庫からの窃盗事件が、相次いで明らかになっている。銀行や信用金庫の行員らが、貸金庫に預けられていた顧客の現金を盗む手口で、今年1月に三菱UFJ銀行の支店で貸金庫業務を統括していた女が窃盗容疑で逮捕された事件以降、みずほ銀行などで同様事件が芋づる式に発覚しており、被害は枚挙にいとまがないようだ。
一方、顧客のプライバシーが重視される貸金庫には、不透明な資金が預けられるケースもあり、金融犯罪に詳しい検事出身のある弁護士は「脱税など犯罪で得た資金を貸金庫に預けるケースの場合、貸金庫から盗まれた『被害者』も事を大きくしたくないので、被害は明るみになりにくい。発覚したケースは氷山の一角ではないか」と指摘している。
◆億単位の巨額窃盗
貸金庫での窃盗被害の特徴としてあるのは、その金額の大きさだ。3月4日に窃盗容疑で逮捕されたハナ信用組合横浜支店次長の男は、令和3年から令和5年3月頃、100回以上にわたり、支店貸金庫から現金計約6億1900万円を盗んだ疑いが持たれている。窃取したとされる現金は、競馬や競輪などギャンブルに費やしたといい、今回の逮捕容疑以外の被害も含めると、被害総額は10億円超も上るとみられている。
貸金庫窃盗事件の「第1弾」として、世間の注目を集めた三菱UFJ銀行の事件も、支店行員の女がスペアキーなどを使い、十数億円相当の金品を盗んだとされ、被害額は巨額に及ぶ。
◆情報開示に後ろ向きだったみずほ
三菱UFJの事件を受けてか、みずほ銀行は今年に入り、顧客2人の現金を貸金庫から盗んだ行員を2019年に懲戒解雇処分にしていたことを公表した。行員による貸金庫からの窃盗という「大不祥事」が起きたこと自体も重大な問題だが、その事実を5年以上も公にしなかったみずほ銀行の「隠蔽体質」には呆れるばかりだ。みずほのコンプライアンスは一体どうなっているのか、疑問を抱かざるをえない。
貸金庫はプライバシーを売りにしていることもあり、銀行側は顧客が預ける巨額現金の原資などを入念に確認することはない。このため、脱税やマネーロンダリングなど犯罪で得た不正な資金が隠されているケースは少なくないとされる。貸金庫で多少の現金が盗まれても、「被害者」となった顧客は目をつぶらざるをえず、金融機関もそうした顧客の意向に乗っかり、窃盗事案を伏せてきた実態もあるようだ。
三菱UFJとみずほというメガバンク2行で発覚後、地方の信用組合でも逮捕者が出た貸金庫を巡る窃盗事件。貸金庫を利用する顧客のプライバシーはもちろん守られるべきとはいえ、職員による顧客資産の窃盗という大不祥事を公表しない理由が正当化されるはずはない。各金融機関のモラルが問われている。
今後、同種事案について自主的に名乗りを上げて公表する金融機関がどの程度出てくるのかが注目される。
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